第218話 何故か焼肉
「いただきまーす!!」
「よーし! 好きなだけ食ってくれ!」
東京某所の焼肉食べ放題店にて。
今日は監督と父さんの奢りである。
本日の木更津猫愛戦の祝勝会だな。
何故急に焼肉会なんて開いたのか。
それはただのきまぐれである。
試合は剛元の2点タイムリーの後。プリンスも続いて追加点をもぎ取った。
そして九回をキャプテンがしっかり三人で仕留めてゲームセット。
龍宮高校は無事に関東大会準決勝に駒を進めた。
で、試合が終わってから誰かが焼肉食べたいなーって。そしたら、監督と父さんが思ったより乗り気で急遽この場が設けられたという訳だ。
いやー誰が言ったんだろ。良い仕事しましたね。
「あ! 俺が育ててた肉!」
「ふっ。目を離したら取られても仕方あるまい」
俺が丹精込めて育てた肉を横から父さんに持って行かれた。いくら今日のお財布様だと言ってもやって良い事と悪い事がありますよ。
人が育ててる肉を取るのは重罪。
六法全書にも書いてある事です。
「ほら。豹馬にはこれをやろう」
「わーい」
父さんから渡されたのは美味しいキャベツ。
塩だれが良い味をだしてるんだ。焼肉に来たらこれは外せないね。
「それにしても剛元君は一皮剥けたかもな」
「そう? ギリギリのポテンヒットって感じだったけど」
俺は目の前の厚切りハラミを睨みつつ父さんと話をする。今度は目を離さない。
極上の焼き加減に仕上げてやるぜ。
「いや、あの一本は大きい。その前も当たりは良かったしな。最後のチェンジアップもギリギリまで体を残せてたからこそだ」
「そりゃあ良い。龍宮のベンチ層がまた厚くなるね」
まだだ。まだ早い。もう10秒焼く必要がある。
この最後の10秒が重要なのだ。
「でもなぁ。スタメンがなぁ…。あ、豹馬タレを取ってくれ」
「あー。迷うよねぇ。はいよ…。あれ? 肉がない!!」
「ふっ。目を離したら取られても仕方あるまい」
タレを取る為に目を離した一瞬の隙をつかれた。
なんたる策士。あまりにも流れでお願いされたから…。くっ…。また焼き直しか…。
「ほら。豹馬にはこれをやろう」
「わーい」
父さんから渡されたのは美味しいキャベツ。
塩だれが良い味をだしてるんだ。焼肉に来たらこれは外せないね。
……なんかさっきもこの流れをやったような?
「外野はなぁ。ウル君に大浦君。一二三君も伸びてきたし…」
「そこに剛元が割って入るのはねぇ」
もう真面目に焼くのは諦めた。
大体俺はバカ舌なので。焼き加減とかいまいち分からんし。焦げてなかったり、生焼けじゃなかったらなんでも美味しい。
「剛元君の本職はサードなんだけど…」
「残念。そこには魔王が居る」
サードは邪智暴虐のバケモノさんが居座ってる。
だから剛元は外野も練習してるんだけど、最近は一二三少年もだし、他の控えメンバーも伸びてきている。簡単にレギュラーは取れない。
「代打の切り札かなぁ」
「それならまずプリンスだと思うけど」
いくら変化球を打てるようになってきたとはいえ、まだまだ打撃はプリンスの方が良い。
リードに集中しない一打席勝負ならそれなりに結果を出してくれるんじゃないかと思っている。
「セカンドは速水君で埋めれそうなんだけどね。うーん。戦力が充実し過ぎて迷うなんて、贅沢だなぁ」
「なんかキャベツでお腹いっぱいになってきたな」
ぽりぽりとひたすらキャベツ食べてたらそれだけで軽くお腹が膨れちゃったよ。
せっかく焼肉に来たのになにしてんだか。
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