第114話 冬の成果
二月下旬。
あと少しで対外試合も解禁である。
練習も最近は体を虐めるのではなく、実戦向けの練習に切り替わっている。
「体ってこんなに軽かったんだな。筋肉痛がないだけで動きやすさが全然違う」
流石に練習試合も始まるのに、体が動きませんでは話にならないからな。
今は冬で大きくなった体をしっかり慣らす練習をしている。
そして、冬の練習の効果は既にかなり出ている。
「ストレートが無理せず150キロでるようになってるな。変化球のキレも良すぎて調整しないと、コントロールが甘々だな」
センバツまでにしっかりしないと。
MAX球速は変わらんけど、この時期に150キロ出てたら十分だろう。
冬とか春は球速が出にくいからな。
「レオンも新フォームがしっかりモノになってるなぁ。冬の間に相当振り込んでたし。バケモノが慢心せずに努力するって、恐怖以外の何物でもないだろ。木製バットもちゃんと使いこなしてるし」
あいつ、今からプロ行ってもそれなりに活躍出来るのでは?
シーズン通して稼働出来る体力があればだけど。
「負けてられませんなぁ。でも最近は勝負の勝率が良いんだよね」
俺が成長したのか、あいつ的にはまだしっかりアジャスト出来てないのか。
前者であってほしいもんです。
「あ、豹馬! 良いところに!」
今日も今日とて、ブルペンで変化球の調整をしようと思ったら、キャプテンに声を掛けられた。
この人もこの冬でしっかり仕上げてきて、夏以上に体ががっちりしてきている。
4ヶ月もあれば人間変わりますよねぇ。
「どうしました?」
「金子が大浦と勝負して勝ったんだよ! その勢いでレオンと勝負してやられちゃったけど」
「おお! とうとうやりましたか!!」
最近投手陣でブームになってるのは、打者陣に五打席勝負を挑んで勝敗を競うというもの。
五打席でヒット性の当たりを打たれなかったら勝ちだ。
「長い戦いだったね。1週間ぐらい掛かったんじゃないかな?」
「そうすっね。後はラスボスだけです」
「豹馬は最近勝ち越してるもんねぇ」
キャプテンでも、レオンには負けている。
というより、勝てていない。
大浦には早い段階で勝てたんだけどね。
レオンを五打席連続で抑えるというのは、中々に至難の業である。
まっ、俺は抑えたんだけどね! ふはははは!
「最近、雨宮、后、岸田、清水も抑えるのに苦労するぐらい打つ様になってきた。これは甲子園が楽しみだね」
「特に、ウルとタイガっすね。この冬で少し力がついたから、スイングが鋭くなって強い当たりを打てる様になったのが大きいっす。春先や夏は少しパワー不足かなと思ってたんで」
ただでさえ、極悪だった龍宮打線がこの冬で更にパワーアップ。
そこにキャプテンが復活して、投手陣も盤石ときたもんだ。
金子も大浦に勝てるぐらいに成長した訳だしね。
この春のセンバツは龍宮旋風が起こる事間違い無しだな。
俺も一気に名前を売って全国区だ。
中学時代もそれなりに有名で東京でも名前が売れてきたけど、所詮シニアだからね。
高校野球の甲子園で名前を売るのは一味違うってもんよ。
帰ったらサインの復習をしておこう。
いっぱい書く事になるかもしれん。
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