第249話 VS八王学園1


 「おおー。いつも以上に客が入ってるな」


 試合当日。ベンチに座って試合の準備をしると、続々と観客が入ってきた。

 龍宮ベンチの方では、ベンチ入り出来なかった部員、吹奏楽部、チア部が既にスタンバイしている。


 「あ、渚ちゃんめっけ」


 父さん母さん輝夜さん。そして、妹の神奈と一緒に渚ちゃんの姿も発見した。これで俺の能力は当社比1.25倍になる訳だ。やる気がみなぎって仕方ない。


 俺は手を振りながら試合前最後の調整をする。肩甲骨を意識して腕をぐるんぐるん回す。

 所謂マエケン体操だ。最近やり始めた。効果が出てるかは分からないけど、気持ち良いから普通に継続している。


 時間になって整列。

 なんか滅茶苦茶ギラギラとした視線を向けられてるんだけど。


 「俺、八王の試合は出てないんだけどな。視線を向ける相手を間違ってるんじゃないですかね」


 リベンジに燃えてるのは分かるけど、それはレオンとかに向けてもろて。

 あの子が初回にホームランを打ったから、楽な試合展開だったんですよ。



 そんなこんなで初回。

 龍宮は後攻なので早速マウンドへ。

 まっさらなマウンドはやっぱり良いな。


 先頭バッター。

 雄叫びを上げて俺にガンを飛ばしてくる。

 肩に力が入ってますねぇ。


 初球。

 アウトコースへチェンジアップ。

 肩に力が入りまくってんだもん。絶対ストレートを狙ってるでしょ。そこに正直に投げ込む程俺は馬鹿じゃない。甲子園初登板の時は投げたけど、それはさておき。


 案の定豪快な空振りをした先頭バッター。

 ホームランでも狙ってるのか? そういうのは1番バッターに向いてないと思うが。

 出塁は出来なくても、なるべく多く球数を投げさせてしっかり球筋を見て、次のバッターやチーム全体に伝えるって大事な役目があるだろう。


 あの馬鹿なウルでもやる事だぞ。

 それとも初球は絶対ストレートを投げてくるってタカを括ってたか? それならそれで気配を隠せよと思いますね、はい。


 2球目。

 アウトコースへ少し外したストレート。

 タイガも初球の豪快な空振りが気になるのか、少し様子見をしたいんだろう。

 これには反応せずストライク。

 ………ストライク?


 確かに際どいけど、ボール球だ。

 今日の審判は外を広めにとるのか。


 3球目。

 同じコースへストレートを投げる。

 ツーナッシングと追い込まれてるのに、カットの素振りも見せず、相手バッターは見送る。


 そして今回はボール。さっきとほぼ変わらない高さとコースなんだが。


 「可変式か」


 稀にいるんだよね。ゾーンがコロコロ変わる審判。1番嫌いなタイプだ。

 狭い広いを一試合中やってくれるなら、それに合わせたピッチングをするだけだけど、その時によって変えられるのはたまらない。

 これが初回の先頭バッターで良かった。勝負所とかで可変されたら困る。


 その後、少し球数を使い全コースに散らしながらコースを確認した。

 結局9球使ったが最後はセカンドゴロに打ち取る。


 続く2番3番は二者連続三球三振で仕留めて一回表が終了。15球なら及第点だろう。


 「無理だな。あれは気分でコロコロコースを変えるぞ。害悪審判だ」


 「だね。癖とかが分かれば良いと思ったんだけど、本当に気分でコースを変えてそう」


 防具を外すのを手伝いつつベンチでタイガと喋る。タイガは2番なので、すぐにネクストに行かないといけない。


 こっちの攻撃時でも可変なのかの確認したいな。多分そうだろうけど。

 ウルさんの粘りに期待しましょう。

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