第248話 懐かしの


 今回の試合も無事に五回コールド勝ち。

 三回で金子が下がりミズチが登板したが、この試合は二回をヒット一本の無失点。

 ミズチは落ち着いたみたいだな。


 一二三少年と速水も悪くはない。一二三少年は三打点だしな。速水もしっかり出塁は出来ている。


 でも本来のポテンシャルを考えると少し物足りなく感じてしまう。

 何か手を打ちたいところだけど、俺達がやいやい言い過ぎるのもよくない。物足りないのは自分が良く分かってるだろうしね。

 ここは静観して、自分でどうしようもなくなったら手助けしよう。




 「次の相手は八王学園や」


 「おおー」


 試合後。

 いつも通り部室に戻ってきてミーティング。

 次の試合は八王学園に決まったらしい。

 去年の二回戦で当たったところだな。


 「前に戦った時は相手が最初油断してたところを先制パンチ喰らわせたんだっけ」


 「七回コールドだったよね」


 そうそう。俺は出番がなかったけど、キャプテンと金子が投げたんだよね。

 あれからもう一年か。早いもんですな。


 「先発は豹馬な。点差次第でまた蛟原に代えるぞ。少しでも経験積んでもらいたいし」


 「いえっさー」


 「はい!」


 やっと今大会初めての出番ですよ。

 点差がついたら早めの降板もありえるだろうけど、八王学園は普通に強い。

 前回みたいに油断もないだろうし、こっちも心してかからないといけない相手だ。


 「とりあえずこの前の試合の映像をみていくで。相手ピッチャー、バッターの特徴をちゃんと把握しとけよー」


 


 ☆★☆★☆★


 「リベンジマッチだ!!」


 八王学園の野球部は燃えていた。

 去年の屈辱的敗戦。油断していたとはいえ、七回コールド負け。

 西東京でそれなりの強豪校だと思っていた自信は消え去ってしまった。


 その後龍宮が夏はベスト4、秋は優勝して、センバツ出場したお陰でなんとか面目は保てたものの、学校のブランドはかなり下がっていた。


 三年生が引退し、監督が解任になり。

 そこからはいつかリベンジする為に、猛練習に励んでいた。


 「先発三波かな?」


 「だろうな。今大会まだ登板してないのが三波だけだし」


 今までの龍宮の試合映像をチェックして、対策を考える。


 「だめだ。ぶつけるぐらいしか、思い浮かばん」


 「三波から打つのら至難の業だよなぁ」


 何度映像を見ても三波から打てるイメージが湧かなかった。


 「奇跡的に体調不良とかになってくれないかな」


 「それなら先発回避するだろ」


 「それもそうか」


 意見を出し合いながら試合映像を見ていると、部室のドアが開く。


 「あ、大井」


 「ん? ああ。龍宮の映像か」


 「お前が浅見にホームラン打たれた映像を流してやろうか?」


 「やめろやめろ。今でもたまに夢を見るんだぞ」


 部室に入ってきたのは、去年龍宮との試合で先発して一回でノックアウトされた大井。


 笑いながら喋ってるが、当時はかなり落ち込んだ。自分が先輩の夏を終わらせてしまったと。


 それからは猛練習して、課題だったコントロールもかなりマシになり。

 今では西東京ではそれなりに有名な投手になっている。


 「三波もやばいけど、打線もやばいよな」


 「ほんと、なんで急にこんな高校が出て来たんだよ」


 映像チェックには大井も加わり、その後もしっかり研究していく。

 これは龍宮との試合がある前日まで行われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る