第250話 VS八王学園2


 一回裏。

 先頭バッターはウル。害悪審判に負けずにしっかり球筋を見て行ってほしい。

 微妙なところは全カットする勢いで。


 相手ピッチャーは大井さん。

 去年も先発で投げてた人だな。あの時は二番手だったけど、今ではしっかりエース。

 コントロールがあんまり良くなくて荒れてた印象だけど、この一年でしっかり成長してるらしい。


 構えたところにビタビタとまではいかないが、ある程度の投げ分けは出来てるなというのが映像を見た印象だ。特にカーブが良いんだよね。金子レベルかもしれん。


 まぁ、金子は複数のカーブを高いレベルで投げ分けてるから、比較対象にはどうかと思うけど。


 ストレートも常時140前半。春には149キロを計測している。普通にプロに引っ掛かる可能性がある選手なんじゃないかな。


 そんな事を思ってるとウルが四球で出塁。

 7球粘ったけど、コースが可変なのかは確認出来ず。本当に微妙なのは全カットしたからね。明らかに外れてるボールでは比較出来ない。


 「ある程度割り切って打てるボールにしか手を出さないようにするしかないのかもな。なんかあれこれ考えるのが馬鹿らしくなってきた」


 「打つ方はそれで良いかもしれないけど、豹馬はキツくない? ストライクを取ってくれるなら良いけど、ストライクをボールって言われたら、俺ならしんどくなっちゃう」


 まぁ、多少は球数増えるのを覚悟で投げればなんとかなるんじゃなかろうか。

 この試合勝てば、また俺の出番はないんだろうし。150球ぐらいなら投げますぜ。


 2番のタイガは無難に送りバント。

 小技も出来て長打も打てる打者って貴重ですよねぇ。初回から強気にヒッティングでいくと思ってたけど、監督は先制点を取りに行った模様。


 3番のレオン。

 一塁は空いている。ここで後ろが頼らなかったら敬遠も普通にあるんだろうが。

 残念ながら4番は大浦なのである。今ではレオン並みに評価されてるからね。


 安易に敬遠なんて出来ないだろう。そして5番は隼人。最近はランナー無しでもひょっこり打つ様になってきたし、得点圏にランナーがいる時の打力は相変わらず健在。


 地獄のクリーンナップですよ。ええ。


 「お。勝負か」


 八王学園のバッテリーは勝負を選択。

 これは面白くなってきました。


 初球。

 アウトコースへのストレート。

 レオンはこれに手を出したが捉えきれずにファール。


 「今のストレート?」


 「なんか微妙に変化してるかも」


 レオンも微妙に首を傾げてるし。映像では特に癖のないストレートに見えたんだけどな。球速もストレートと変わらないように見えるし、レオンの打ち損じだろうか。


 2球目。

 真ん中低めへカーブ。

 これはレオンは見送ったがストライク。

 今のは微妙だな。ストライクともボールとも取れる。


 3球目。

 高めのストレート釣り球を見逃してボール。


 4球目。

 初球と同じようにアウトコースへストレート。レオンはこれを打って行ったが、強烈なセカンドライナー。


 ウルは戻り切れずにダブルプレーになってしまった。


 「うーむ。今のは仕方ない。飛んだ場所が悪かった。もう少し浮かせて欲しかったところだけどね」


 「豹馬が打撃論を語るのは間違ってるよ」


 「さーせん」


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る