閑話 レオンとの出会い4


 レオンと初めて練習してから1週間後。

 今日はレオン母のパートが休みみたいなので、俺と父さんはレオン家に向かっている。

 あれから、平日は毎日レオンの妹を迎えに行き、我が家で練習していたので家は覚えている。

 神奈もレオン妹、渚ちゃんと仲良く毎日遊んでいて天使具合に磨きがかかってご満悦である。


 そして我が家から徒歩で20分程度、車なら10分も掛からないぐらいの時間でレオン家のアパートに到着する。

 近くのパーキングに車を停めて、いざピンポン。


 「は〜い」


 「本日お約束していた三波です」


 「あらやだ〜。本物だわ〜。ささ、どうぞ上がって下さい〜」


 ぽわぽわしてるな。

 レオンからは想像も出来ない。

 渚ちゃんのぽわぽわ具合も母親からうつったのか。


 「こちら、つまらない物ですが」


 「まあ〜ご丁寧にどうも〜。早速お出ししちゃいましょうね〜」


 ぺ、ペースが掴めぬ。

 ここまで俺は喋っていないが、父さんも苦笑いだ。


 「よっ、レオン。渚ちゃんもこんにちわ」


 「今日はわざわざ良く来てくれた。感謝する」


 「こんにちわ〜」


 うむ。神奈に負けず劣らず天使しておるな。


 「お待たせしました〜。今日は息子の為にわざわざありがとうございます〜。私、野球って偶に見るぐらいしか詳しくなくって〜。息子がやりたいというならやらせてあげようとは思ってるんですが〜。どうしても当番が厳しいんです〜。融通の効く職場で働けたら良かったんですが〜土日祝は忙しくなる所で働いてまして〜」


 おお。こっちまでぽやぽやしてくるな。

 なんて魔力だ。


 「そうですね。当番もそうですが、まずはシニア野球にかかる費用について説明させて頂きます」


 それからは父さんはゆっくりと野球に詳しくない人でも分かり易い様に説明する。

 いつの間にか資料なんかも用意してたらしく、父さんのプレゼン能力に驚く。

 あんまりパソコン操作が得意じゃないのに。

 恐らく、母さんに手伝ってもらったんだろうな。


 話を聞いてると、やっぱり結構お金掛かってるんだなぁって思う。

 月の会費だけで3万ちょっとするし。

 そこから、野球道具は我が家で余ってるのを提供するにしても、スパイクは流石に買ってもらわないとだし、練習用のユニフォームやらアンダーやら。

 バッティング手袋につけるならプロテクターも。

 なんて金の掛かるスポーツなんだ。

 チームで買ってくれるのもあるけど、それも会費から出てる訳だし。


 一緒に話を聞いていたレオンも段々と顔が青くなっていってる。

 想像以上にお金が掛かってるからだろう。


 「まぁ、こんな所ですね」


 「まあ〜。思ったよりもお金が掛かるんですね〜」


 「そうですね。初期費用はかなり掛かります。大事に使えば、その後はあまり掛からないんですけどね。でも道具や服といった物はいつか壊れるものですし」


 「そうですね〜」


 「それでお母様も気になっている当番の事ですが」


 「はい〜」


 これはいつも主に母さんがやってくれてる事だな。

 父さんも試合の時は観に来てくれるが。

 ここでも父さんは丁寧に説明する。


 正直、当番は月に1.2回だ。

 最近は共働きも増えて来て、それに対応するような方針に変わりつつある。

 遠征の車出しはチームでバスを借りるしね。

 その分会費がちょっとお高めになってる部分もある。

 普通の練習の送り迎えは近場の人達が拾ったり、降ろしたりしてくれる為、割と楽な方なんじゃないだろうか。

 俺達も基本的に我が家が送り迎えしてるし。


 「こんな感じですね」


 「そうですね〜。それぐらいなら私でもなんとかなりそうです〜。当番には娘も連れて行っていいんでしょうか〜?」


 「勿論です。同じ様に連れて来てらっしゃる家庭も居るので友達も出来るかもしれませんね」


 「いや、ちょっと待ってくれ、母さん。流石にお金が厳しいだろ。渚も居るんだし、俺ばっかりにお金を使うのは…」


 「子供がお金の事言うんじゃありません!」


 ビクッってなった。

 ぽやぽや喋りから一転。

 とても厳しい表情に。

 なるほど。怒らせたらダメなタイプだ。

 豹馬一つ賢くなりました。


 

 

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