第96話 VS三高6


 六回裏。

 打順は先程ファインプレーのウルから。

 前の打席でセーフティバント決めてるから、内野は少し前進している。

 そんな中で、またもや初球セーフティの構え。

 バット引いてボールになったがチャレンジャーすぎる。


 2球目は、普通にバッティングの構えで見逃してストライク。


 3球目、インコースのストレートをセーフティバント。

 かなりチャージをかけて来ていたファーストだがウルは機転を効かしてプッシュバント。

 ファーストの横を抜け、セカンドがキャッチ。

 霊山のカバーと競争になったが、悠々セーフ。

 まさかの二打席連続バントで出塁である。


 「あいつがあんなに頭使って野球やるとはなー。誰の入れ知恵や?」


 監督も今回のウルのプレーには驚いたみたいだ。

 ウルが考えてやったと思われてない所が、ウルたる所以だな。


 2番のタイガは最初からバントの構え。

 塁上ではウルがちょこちょこと動きプレッシャーをかける。

 牽制を2球挟み、初球。

 ウルはスタートを切る。

 そしてタイガは、インハイに投げられたストレートをバットを引いてスイング。

 空振りにはなったが、盗塁は成功。


 ノーアウトでランナーは2塁となり、今度こそタイガはバント。

 しっかり送り、ワンアウト3塁でレオンを迎える。


 ここまでフェンスギリギリの所まで飛ばしながら、アウトになっているレオン。

 微妙に捉え切れてないとの事だが果たして修正出来ているのか。


 初球、膝下のスライダーを見送りストライク。


 2球目、アウトローへのストレートを逆らう事なく振り抜いた。

 打球は三遊間を綺麗に破り、タイムリーヒット。

 値千金の追加点が入った。


 「勝ったな。風呂入ってくる」


 「やめてよ、くそフラグじゃん」


 思わず言ってしまったけど、それぐらいこのタイムリーは大きい。

 スランプ? だったレオンもヒットが出たし。

 たった1試合当たりが無かっただけで不振を疑われるレオンも大概だけどな。


 その後、大浦がショートゴロでダブルプレー。

 霊山が追加点を与えず、六回が終わる。

 当たりは悪くなかったけど飛んだ所が悪かったってやつだな。


 そして、七回の俺は更にギアを上げる。

 ここまで手を抜いていた訳じゃないが、常に8割ぐらいの力で投げて、勝負所だけは力を入れて投げていた。

 前の回も柳相手には全力投球だったんだが、中々に危なかったな。


 「ここからは、縦スラは封印するぞ。タイガが言ってた様にコントロールがまだ甘々だからな。その代わり、回転数の多いストレートも混ぜていく。三高打線に絶望を教えてやろう」


 「了解。カッコつけて打たれるのだけは勘弁してね。回転数の多いストレートは当たれば飛ぶんだから」


 「当てさせる訳なかろうが」


 宣言通り2番から始まる打順を三者凡退に抑える。

 三振は一つしか取れなかったが、残り二つは内野フライと悪くない結果だろう。


 そして試合はそのまま進み、とうとう最終回を迎える。


 

 

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