第73話 VS三松学舎4
七回裏の龍宮高校の攻撃。
俺の今日の調子が信用出来ないのか。
珍しく下位打線が繋がり、1点を追加する。
しかし、1番に戻ってウルが内野ゴロに倒れて攻撃が終わった。
「へいへーい! ウルさんよぉ。調子悪いんじゃないのぉー? 復帰初戦のピッチャーを助けてやろうよー!」
「うるさいな、一発男。今日のパンにだけは言われたくないね」
「そうだそうだ、一発屋〜!」
「調子に乗ってホームランとか、信じられないよね」
「これでプロ志望だからな。片腹痛し」
集中砲火じゃん。
味方がいないよ。
「君達ね。誰にだってホームラン打たれる事はあるのよ? たまたま出会い頭で打たれたからって当たりが強すぎるよね」
どこぞの、神宮の魔王様でもシーズンに1回ぐらいは打たれるんだ。
今までの俺が天才過ぎた弊害だね、これは。
「ホームラン打たれるなとは言ってないよね。調子に乗るなと言ってるんだよ。無敵君(笑)」
むっかちーん!
今世紀最大のむかつく顔だ!
やってやんよ! 俺やってやんよ!
「よーし! そこまで言うのなら分かった! 後打者6人全員三振に取ってやるよ!」
「みんな聞きましたか〜? 無理だったらパンが焼肉奢ってくれるそうでーす!」
「え? いや、ちょ…」
「ご馳走様でーす!!」
「焼肉は久しく食べてないな。ご馳走様になるぞ、パン」
「あ、はい」
こいつらが3年間チームメイトなのか。
なんて暖かいんだ。
やっていけるかな。
八回表は、宣言通り三者三振で仕留めた。
流石プレッシャーに強い男、俺。
脳汁がドバドバ出て、トランス状態になってるかもしれん。
「ちっ」
「くそがよ」
「調子に乗らせなかったら、しっかり実力発揮しやがって」
「あーあ。豹馬君は俺達とご飯行きたくないんだってよー」
いや、行くのは良いんだよ?
お財布からお金が無くなるのが嫌なの。
君達味方だよね?
もっとピッチャーを盛り立てようよ。
裏の攻撃があっさり終わり、最終回。
緊張はしてないはずなのに、背中から変な汗が出てる様な気がする。
大体9人連続三振って控え目に言って偉業だよ?
しかも相手は三松学舎。
世界は俺に何をさせたいんだ。
先頭バッターへの初球。
インハイへのストレートを空振りさせる。
2球目はアウトローへのチェンジアップ。
これは見逃されてボール。
3球目にアウトローへのスラッター。
ストライクゾーンからボールゾーンに逃げて行くボールで空振り。
追い込んでからの4球目。
ナックルカーブをインローへ。
手が出ずに見逃し三振。
「ふぃー。神経使う〜。無駄に体力消耗してる感あるな」
先頭は左打者だったから、楽に調理出来たけど次の4番と5番は右打者。
気が抜けない戦いが続く。
しかし、ここは流石の俺。
大人気なく、ツーシームを3つ続けて空振り三振。
俺ちゃんは、前の打席でホームラン打たれた事を根に持ってるので。
ある意味お前のせいでこうなったんだからな!!
責任転嫁も甚だしいけどそういう事にさせてほしい。
そして運命の最終バッター。
ここを三振に取れば俺は呪縛から解放される。
初球は慎重にボール球のストレートから。
しっかり見逃されてボール。
2球目はギリギリストライクゾーンを掠めて行くようなナックルカーブ。
しかし、判定はボール。
「いや、入ってると思うんだよな〜。高校野球は本当にカーブの判定が渋いよね」
まあ審判は神様なので。
落ち着いて行きましょうか。
3球目はインハイへのストレート。
これは空振りでストライク。
4球目はスイーパーをアウトローへ。
バックドアが見事に決まりストライク。
よしよしよしよし!
追い込んだぞ!
これで最後の予定の5球目。
アウトコースへチェンジアップ。
体勢は完璧に崩して、よし三振! と思ったんだが相手バッターはなんとかバットに当てやがった。
フラフラと上がった打球はキャッチャーの真上。
「だめだめ! 取るなー!」
思わず叫んでしまったけど、タイガはそれはもう満面の笑みでがっちりとキャッチ。
「ガッッッッデム!! 最後の最後で当てるなよ!! 期待持たせんなよ! ばっきゃろー!」
相手に聞こえない様に小声で雄叫びを上げる器用な事をしながら整列する。
「やっきにくー! やっきにくー!」
もう、みんな目が肉なんよ。
てか、部員全員に奢る程のお金は流石に持ってないんだが?
パパンに泣きついてもよろしいですか?
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