第259話 VS東海大2


 相手の二番は初球のストレートを打って、ショートゴロ。隼人が軽快に捌いてツーアウトである。


 「とりあえず第一関門は突破か」


 「このクリーンナップの前にランナーを出さないのか大切ですからね」


 ベンチに座りながらミズチと話をする。

 東海大の打線はどの打者も面倒だけど、とにかくこのクリーンナップの弾呉三兄弟。

 これの前にランナーを溜めない事がかなり重要なのである。


 三番は三男の三輝。

 ホームランバッターというよりは、広角に打ち分ける事が出来る感じの印象。

 勿論、ホームランも打つんだが。


 初球。

 インコースへのスライダー。フロントドアである。

 キャプテンは輝夜さんのお陰でスライダーが滅茶苦茶伸びたからな。決め球になってもおかしくない。


 相手は若干腰を引いたけどストライク。

 ちょっと驚いてる感じだな。キレが予想以上だったんだろう。


 2球目。

 インハイへのストレート。これはスイングしてファール。


 3球目。インローへのスライダー。これは外れてボール。


 「徹底的にインコース攻めだな」


 「弾呉三輝はアウトコースに強いみたいですからね」


 そうだけど、露骨に攻めすぎじゃないかと思うが。これだけ続ければ相手も慣れるぞ。

 多分どこかで投げると思うが。


 4球目。

 言ってたらアウトコースへのボール。

 が、相手は待ってましたとばかりにスイング。

 しかし、ボールはバットに当たらなかった。


 「カットボールか」


 「上手いですね」


 ほぼストレートと同じ球速。

 ストライクコースギリギリから、微妙に逃げていった。だから相手のバットが届かなかった。ここしかないってぐらいの完璧なコントロールだったな。


 「1.2番はストレート主体だったけど、弾呉には変化球多めだったな」


 まぁ、そこは言っても仕方ないか。

 上手い事調整しながら投げてくれとしか言えん。


 「お疲れっすー。どうでした?」


 「上手く躱したって感じかな。次はこうはいかないと思うよ」


 キャプテンにドリンクを渡しつつ話を聞く。まだまだやる気いっぱいでなにより。

 この調子で次の4番5番も片付けちゃってくだせぇ。


 ☆★☆★☆★


 「カットボールかー。してやられた」


 弾呉三輝はしてやられたと言いながらもニコニコしながらベンチに戻る。


 「スライダーはどうだ?」


 「ベンチから見てもキレがあったけど」


 「凄いよ、あれは。ちょっと当たるって思ったもん」


 守備の準備をしつつ手早く情報交換をする。まだ打席が回ってきてない選手に自分の所感を伝えるのは大事なのだ。


 「ストレートもしっかりスピンが効いてて捉えにくいな。捉えたら飛ぶんだろうが」


 「やっぱり一筋縄でいかないか」


 「流石ドラフト候補」


 三兄弟はうむむと考える。試合前は四季の為に三井を引き摺り下ろして三波を登板させてやると息巻いていたが、自分達の見たては甘かったらしい。


 「とりあえずまだ初回だ。打者一巡はしっかり見ていく気持ちでいくぞ」


 「一球でアウトになった馬鹿もいるけどな」


 「打てると思ったんだ…」


 わはははと笑いながら東海大の面々は守備につく。試合はまだ始まったばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る