第13話 練習試合
高校の授業も始まって、気付けば4月下旬となりまもなくGWとなる頃。
俺たち龍宮高校は、絶賛練習試合中である。
既に、5回程練習試合しており全勝している。
まぁ、新設の高校なのでまだまだ知名度が無く、強い高校と戦っていないんだが。
しかし今日の相手は違う。国無舘である。
甲子園に出場経験もある言わずもがな強豪校。
父さんの知り合いがコーチしてるらしい。
コネ万歳。
そして、現在6回表。2ー2の同点。
エースの三井先輩に変わりこの回からおれがマウンドに上がる。
ここまでの練習試合で俺は15回を投げまだ失点はなしである。
というより、龍宮高校の投手陣は2失点以上取られた事はない。
吉見先輩ですらこれまでの練習試合で好成績を残している。
ただ今日の相手はいままでと違う。
場合によっては新球種のお披露目となりそうだ。
先頭バッターへの初球。
インハイへのストレート。バッターは見逃してストライク。
むむ? なんか今日調子良さげ? ボールが指に掛かる感じが感覚的に凄く良い。
2球目はインローに決まるナックルカーブで空振り。
3球目はアウトローへのストレートで空振り。
三球三振である。
そしてその後のバッターも三振に仕留め、三者連続三振である。
「今日スピードガン持ってきてる? 最高球速更新できそう。それぐらい調子良き」
「もう更新してるぞ」
そう言って、監督が見せて来たスピードガンは144キロを表示していた。
「ふぅー! 流石俺! さすおれ! 絶好調だぜ! このままホームランも打ってこよかな!」
俺はテンションMAXでネクストに向かった。
ベンチでは。
「あいつ、天狗になってねぇ?」
「パンは調子に乗せといた方がいいんだよ」
「そしてその鼻をレオンに折ってもらうまでがお約束」
「レオンがいなかったら挫折ゼロだったろうな」
「俺達もそろそろレオンとパンにおんぶに抱っこは卒業しないとな」
サクッと三振して戻ってくると何故かチームの士気が上がっていた。
なんだなんだ?
そんなにおれの三振が嬉しいか?
なんて不貞腐れながら7回のマウンドに向かう。
「新球種は使うのか?」
「様子見てって感じかな。出来るだけ隠しておきたいし」
7回の先頭バッターはセカンドゴロに打ち取り、問題は次の打者。
プロ注目の財津君だ。
高校通算50本を超えるホームランを打っている。
初球にあえて、チェンジアップから。
ストレートを狙っていたのかタイミングを崩して空振り。
2球目はアウトローにナックルカーブ。見逃してボール。
3球目はアウトハイにストレートでファウル。
4球目はチェンジアップを投げるもまたしてもファウル。
(空振りしねぇ。選球眼もいいし、やっぱり上澄みは違うなぁ。新球種使うか)
俺はタイガのサインに首を振り自分でサインを出す。
そして5球目。インローへのフロントドア。スラッターである。
財津はのけぞっていたが見逃し三振。
目を見開いて驚いている。
いいね! その顔90点! 二度見してくれたら100点だったのに。
次の打者も普通に好打者だが空振り三振。
「やはり今日の俺は絶好調である。今ガチャ引いたらなんでも当てれそう」
その裏、キャプテン、レオン、隼人の三者連続タイムリーで勝ち越し。
俺もその後ヒットすら打たれる事なくゲームセット。
公式戦ではないとはいえ、しっかり強豪校に勝利出来たのはいい経験になっただろう。
「帰ってミーティングするぞー」
監督の号令もあり、国無舘の皆さんにお礼を言い、学校に戻る。
ちゃっかり財津さんと連絡交換しちゃったぜ。
あ、ガチャ回そ。
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