第126話 初勝利


 「ふぎぎぎぎぎ」


 「ほら、見苦しいから行くよ」


 甲子園で快勝した後のインタビュー。

 監督と二本のホームランを打ったレオンが呼ばれて行ったのを嫉妬100%の目で見送る。


 「やはり直訴してでも初戦の先発で行かせてもらうべきだったか。俺が投げてたら今頃もっときゃーきゃー言われてた筈なのに」


 「渚ちゃんと良い感じなんでしょ? あんな可愛い子が居るんだから満足しなよ」


 それはそれ。これはこれ。

 連絡先を交換したいとか、仲良くなりたいとか、そういうのじゃないんだ。

 ただ注目されて人気者になりたい。

 きゃーきゃー言われて良い気持ちになりたいだけなんだ。

 それだけで俺のパフォーマンスは5割増しよ。




 その後、宿舎に戻りミーティング。

 次の対戦相手は明日まで、分からんから本当に軽くだけど。


 「今日はお疲れさん。野次が凄かったけど、そこまで緊張もせずによくやったと思うわ。今日投げた三井と金子はケアすんの忘れんようにな。打者陣も今日は体を休めとけ」


 甲子園来てから練習量少ないしなぁ。

 体は元気なのに、練習する場所があんまり無いのが難点だね。


 「一応、期間中は近くの練習場を借りてるけど、それも時間制限があるからな」


 「うーん。練習が出来ないってなると、したくなるこの気持ちはなんだろうね。で、実際練習してみたらなんか違うなぁってなるんだけど」


 人間ってなんてわがままなんでしょう。




 「始まったぞ!!」


 その日の夜。

 チームメイトのみんなで、TVの前にもかぶりつき、甲子園特集番組を見る。

 正直いつも寝てる時間だし、俺はどうせ出てないしであんまり興味はないんだけど。

 レオンがチヤホヤされるのを、嫉妬するぐらいか。……なんだ、いつも通りか。


 目をしょぼしょぼとさせながらも、今日の試合のハイライトを見る。

 

 「レオンの紹介のされ方よ。木製バットを使ってるのも、画面映えするんだろうな」


 まだ一試合しかしてないのに、既に高校No.1打者みたいな感じで紹介されてる。

 確かに、レオンはバケモノだけど、探せば絶対にレオン並みの選手は居ると思う。

 そういう選手がプロの上澄みなんだろうし。


 「個人的には白馬君とか嫌だしなぁ。あのどこに投げても打たれる感覚。バットコントロールはレオンより上だと思うし」


 大浦と清水先輩のホームランもしっかり放送されてるし、キャプテンも好投手としてフォーカスされてるな。すっごい羨ましい。


 「俺はホームランを打たれた所しか映ってないや」


 「僕とタイガは一応猛打賞なんだけどな。レオンメインで一瞬しか映らなかったや」


 金子、ウル、タイガが不貞腐れてるな。

 映っただけ良いじゃん。俺は出番無かったしさ。

 まぁ、次の試合の先発を任されたから、次は俺メインにしてみせるけど。

 そんな事を思ってたら、俺の耳に手を当てて聞こえませんポーズが映っていた。


 「良かったね。別の意味で有名人じゃん」


 「うげー。なんか悪役認定されてない? こういうのは辞めましょうだってさ」


 辞めませーん。じゃあ野次馬を黙らせて下さーい。なんで言われっぱなしでいなきゃいけないんだよ。俺達はまだ高校生だぞ?

 逆にこういうのから守る姿勢を見せて欲しいよね。やっぱりウケが悪いのが良くないのかね。


 「まぁ、ちょっとピキりはしたけど、どうでも良いな。辞めないし、実力で黙らせる」


 これが一番よ。掌が捩じ切れるぐらいグリングリンに返せばいいさ。


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 近況ノートを更新しました。

 作者の現状についての報告もありますので、出来れば見て欲しいです。


 

 

 

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