第257話 旗の建設


 ベスト4進出をかけた戦い。

 相手は弾呉兄弟率いる東海大。


 先発はキャプテンの予定だ。

 俺と金子は勿論、ミズチも早い段階からブルペンで準備する。キャプテンが早い段階でボコボコにされる可能性があるからね。


 まぁ、キャプテンがボコられたら、俺達でも止めれるか怪しいけど。もちろん抑える気ではいるけどね。キャプテンは東京どころか、全国有数のピッチャーになっている。


 そんな人がボコボコにされたら、俺達だってどうなるか分からないよねって話だ。

 去年二年生と一年生ながら、弾呉三兄弟で160km投手の菊池から3点取ってる打力は侮れない。


 それなのに。


 「俺、ドラ一で指名されたら龍宮コーチにアタックしようと思うんだ」


 「は、はぁ」


 なんかキャプテンがフラグを建ててらっしゃるんだよね。

 滅茶苦茶綺麗なフラグなんだよ、これが。

 特級フラグ建築士の資格を持つ俺が見ても惚れ惚れするぐらい立派な旗なんですよ。


 試合前日。前日って事で、軽い練習で終わってキャプテンに話があるって言われたから、明日の配球の話かなと思って、色々考えて部室に残ってたんだけど。


 まさかフラグを宣告されるとは思いませんでしたね、ええ。


 「豹馬は龍宮コーチと親戚だろ? 何かアドバイスとかないかと思って」


 「アドバイス」


 恋愛初心者の俺が出来る訳なかろうに。

 俺だって渚ちゃんに告白するのにどれだけ時間をかけたと思ってるんだ。

 いくら輝夜さんと親戚とはいえ、こうしたら良いですよとか口が裂けても言えまい。


 「その…キャプテン的に手応えとかはどうなんです? デートとかは?」


 「分からないから聞いてるんだ」


 俺にも分かるかい!!

 輝夜さんのそういう話とか聞いた事ないからね。


 「ん? そういえば彼氏がいるとかも聞いてないですか?」


 「そういう情報は一切ない。龍宮コーチとはほとんど野球の話しかしないからね」


 「うーん…」


 まずは世間話とか出来るようになるところからでは? お互いの事を何も知らないのに、いきなり告白ってのはちょっと色々すっ飛ばしすぎなんじゃないかなと。


 もしかしたらアメリカに恋人がいて遠距離恋愛とかしてるかもしれないよ?

 輝夜さんは天然だから、無意識のうちに誰かを魅了しててもおかしくないし。


 やっぱり情報が必要だよ。

 交際0日婚とかたまにニュースで見るけど、すげぇなって思うもん。一種のギャンブルでしょ。これから一生を共にしていくであろう相手の事を何も知らないのにさ。

 あ、前から友達だったって可能性はあるか。


 果たしてキャプテンと輝夜さんはどうなのか。友達…ではないだろうし、生徒と指導者って関係。なんかやらしいな。

 しかも未成年と成人ってのも大きな壁なんじゃなかろうか。23歳と18歳。お互いの合意があれば良いんだっけ? 俺も渚ちゃんが歳下だし、色々調べておかないと。


 「とりあえず世間話で彼氏の有無ぐらいは聞いてからの方が良いんじゃないかと」


 「それってセクハラになったりしない?」


 際どい。最近はなんでもそういうのはハラスメントになるからね。これに関しては年齢も関係ない。中学生が担任にそういう話をして事件になったって、何かのニュースで見た。


 「でも込み入った話も出来るようにならないと、恋愛関係になれないんじゃないですかね? 信頼関係の構築と言いますか」


 「なるほど」


 俺は一体なんの話をしてるんだ。

 明日は試合だぞ? こんな浮かれポンチで大丈夫なのかね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る