第263話 VS東海大6


 六回裏。キャプテンの打順の所で代打を出して剛元がソロホームラン。

 4-2とリードを2点に広げた。相手先発もこの回で150球を超えた。完全にすっぽ抜けた球がど真ん中に来たんだ。剛元は良く見逃さなかったな。


 そして剛元に打たれた所で、相手投手は交代。ついに四男の四季が出てきた。

 ウルは8球粘ったものの、最後はスライダーで空振り三振で六回裏が終了。


 結果的に相手ベンチは投手交代のタイミングを間違ったな。回の頭から四季を出してたら剛元のホームランは無かったかもしれん。


 「どうだった?」


 「凄いよ。ほんとシニアの頃のパンを見てるみたい」


 「ほう。じゃあ今のウルの実力はシニアの頃の俺に三振するレベルだと?」


 「むっかちーん」


 とりあえずウルを煽っておいた。

 特に意味はない。でも8球投げさせたのは見事だ。これで四季も簡単に打ち取れる打線じゃないと思ってくれた事だろう。


 てか、今日のウルは頑張りすぎである。

 第一打席もそうだったし、それ以降の打席もいやらしく粘って、相手を疲れさせて、最終的に出塁している。この試合で出塁出来なかったのは、今回が初だ。

 バットコントロールがどんどん上昇してるんだよね。


 「ふーむ。でも要警戒だな。そのウルがバットに当てれなかったスライダーか」


 俺のスライダーの方が上だと思いたいが。

 こればっかりは打者の立場にならないと分かりませんね。俺は打席に立ってもどうせ打てないが。


 そして七回表。

 マウンドには金子が上がる。

 相手は弾呉三兄弟の次男。

 5番の弾呉健二。


 「マジでペース配分考えてねぇな」


 なんとかホームランだけは避けてくれと思ってたんだけど、金子はいきなり全力投球。

 ストレートは見せ球にカーブカーブカーブ。とにかくカーブ。色々な種類のカーブを織り交ぜて、最終的に見逃し三振を奪った。


 「金子は凄いね。あの5番から見逃し三振だよ」


 「審判も良く見てますよね。カーブはストライク判定が分かりにくいんですけど、ちゃんと見えてると思います」


 クールダウン中のキャプテンは満足そうに金子を見てる。金子が本来の力を出したら、普通に全国に通用するんだ。これで自信を持ってくれたら嬉しいね。


 全く。前回の審判とは大違いだ。

 今回の審判はかなり当たりである。

 どちらに贔屓とかもする事なく、ただただ機械のようにコース判別をする。

 しかもそれがほとんど正しいときた。


 こういう審判が増えてくれたら良いのにね。


 「あのカーブの投げ分けって、天性の才能だと思うんですよね。あれは俺にも無理です」


 「フォームも全く変わらないしね」


 俺は持ち球にナックルカーブがあるから分かるけど、カーブの投げ分けって意外に難しいんだ。同じカーブじゃんって思われるかもしれないけど、俺からしたらほぼ別球種なんだよね。


 ボールの抜き方やボールの引っ掛け方が全然違う。それを当たり前の様に投げ分けて、コントロールする。しかも変化量も一級品ときた。あいつは天才だよ。


 そして金子は7回表を三者凡退で抑えて戻ってきた。ペース配分を考えてない全力投球だけど、完璧なリリーフだ。

 後二回なら全然持つだろうし、持たなくても俺がいる。


 このまま逃げ切り態勢だ。

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