第262話 VS東海大5


 「金子、豹馬。準備しとけよ」


 試合は五回裏まで終了した。

 点数は3-2で龍宮がリード。


 両校毎回ランナーを得点圏に進めている。

 東海大がクリーンナップの連続ヒットで一時勝ち越したものの、こちらも負けじとクリーンナップが三連続ツーベースでやり返す。


 五回を終えた時点で、両先発の球数は100球を超えている。疲れもあるだろうし、継投のタイミングが重要になってくる。


 相手エースは結局潰れそうな所で潰れない。序盤から球数を投げさせて、もっと点を取ってる予定だったんだ。ギリギリのところで踏ん張られてる。


 「どっちが投げるのかな?」


 「お前じゃないの?」


 グラウンド整備中にブルペンで投げながら金子と話をする。速球系に強いチームだし、カーブマスターのカーブで翻弄してやればいいさ。


 「抑えれるかなー。ちょっと不安だよ」


 「お前はその自己評価が低いのをなんとかしないとな」


 掲示板のお陰で少しは自信がついたと思ったのに。金子は充分凄いピッチャーだ。

 比較対象が俺とキャプテンなのが良くないのかね。


 でも最近の金子は二年時のキャプテンと比べても遜色ないところまできてると思う。

 ここから後一年の成長でドラフトに引っ掛かるのも充分ありえると思うんだよね。


 「三井、どないする? ここで代わっとくか?」


 「後一回はいかせて下さい」


 って事でキャプテンは六回もいくことに。

 2番から始まる打順で、弾呉兄弟に打順が回るから、キャプテンからすると最後の正念場だな。さっき打たれたからリベンジしたいってのもあるんだろうし。


 六回表。

 2番を三振で仕留めた。

 本当にこの回で最後にするつもりなのか、温存してた体力を使い切るつもりだな。

 明らかに球威が違うし、それは球速にも出てる。


 「ここで150キロオーバーとはな」


 「パンがそれを言うと嫌味になるよ」


 そういうつもりはないんだが。

 でも俺の前回先発してた八王学園戦。

 俺のストレートの平均球速は150キロ丁度だったみたいなんだよね。継続的な出力が上がってきてるなと感慨深かった。


 「リミッターを外してるのかな。怪我しなきゃいいけど」


 3番の三輝を153キロの高めストレートで空振り三振。

 キャプテンは試合前まで152キロがMAXだったから、ここにきて更新である。


 それ自体は喜ばしい事だけど、リミッターを外して怪我をされたら困る。

 後一人4番の一政を抑えて何事もなく帰ってきて欲しいもんだ。



 初球。

 アウトコースにチェンジアップで空振り。

 さっきまでストレートでゴリゴリ押してたのに、ここにきて緩急。いやらしいリードだね。


 2球目。

 さっきと同じようなコースにストレート。

 が、これは僅かに外れてボール。今のはストライクを取って欲しかったところだけど、今日の審判は良く見えてるね。タイガのフレーミングも上手かったけどな。


 3球目。

 インコースへフロントドアのカットボール。相手は振ってきたものの、詰まってファール。良いボールだ。内野ゴロになってくれたらベストだった。


 4球目。

 高めの見せ球のストレート。

 これは相手も見送ってボール。ツーボールツーストライクの平行カウント。次が決め球かな。


 5球目。

 アウトコース低めにギリギリゾーンに入ってるようなボール。

 相手もこれをスイングするも、途中でバットが止まる。ベース手前でストンとボールが落ちたスプリットだったからだ。


 「「振った!!」」


 俺と金子、グラウンドのキャプテンとタイガが声を上げて審判にアピールする。

 そして審判がアウト宣告。空振り三振である。キャプテンは右拳を握り締めてガッツポーズ。


 「最後最高のボールだったな」


 「途中で止めた相手も凄かったけどね。止め切れなかったか」


 絶妙にコントロールされたパーフェクトなボールだった。最後の回を三者連続三振って出来過ぎだろ。


 「キャプテン、体大丈夫ですか?」


 「どうだろ? ちょっとアドレナリンが出過ぎてて良く分かんない」


 ホクホク顔で帰ってきたキャプテンは、今の所特になんともありそうな感じではない。

 とりあえずは大丈夫そうかな。


 「良し。頑張ってこいよ、金子。後ろには俺が控えてるからな。思いっ切りやってこい」


 「ペース配分も考える必要がないからね。精一杯やってくるよ」

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