第7話 家族
俺の家族は父、母、俺、妹の四人家族である。
父は三波勝弥。
元プロ野球選手で日米通算500本のホームランと2000安打を打っており、かなりのレジェンドである。
東京の人気の無い方の球団の東京パンサーズでホームラン王を5回、打点王4回、首位打者を1回、3冠王1回と堂々たる成績を残し、ニューヨークの悪の帝国と呼ばれている所にポスティングで移籍。
そこでもホームラン王3回、打点王3回、首位打者1回とレジェンド級の成績を残し特に怪我をした訳でもなく、巨額のオファーを断り引退。
その時は俺も驚いた。だって後もう少しやればメジャーで年金も貰えたんだぜ? 父さん曰く。
「金はもう十分稼いだし、これからは豹馬の練習相手になろうと思ってな。そろそろ日本に帰って、腰を落ち着けようと思ってたんだ。お前は父さん以上に才能があると思ってるし、元気なうちに引退しておかないと。今年はタイトルも取れなかったしな。まぁ、晩節を汚したくないって理由もあるんだけど」
この時俺氏。小学4年生である。
確かに死後の練習で、才能はあると思っているがこの時点でそこまでわかるものなのかと半信半疑ながらも父さんの提案にはありがたく思ったものである。タイトルが取れなかったって言ってるけど、本塁打、打点共にリーグ2位の成績を残してたんだ。
そして未だ、体が出来てないとはいえ、父さんを完璧に抑えた事がない。
ぽこぽこ打たれやがる。
高校に上がるまで解禁しないようにしてた変化球を使っても完敗である。
引退して何年経ってると思ってるんだ、化け物め。
いつかそのドヤ顔を崩してやりたい。
父さんは引退してから、有り余る金を使って元々持っていた都心から少し離れた土地の周りを買い足し魔改造した。
これは俺のせいでもあるんだが。
「スーパー銭湯とジムがある施設とか儲かりそうだなー」
これは前世にあったもので中々評判が良かったのを何かの拍子に思い出し、ぼそっと独り言で呟いたつもりだったのだ。
それを聞いていた父さんは、恐るべき早さで更に、二つとビジネスホテルやコインランドリー、コンビニ等の複合施設を建ててしまった。
フットワークが軽すぎる。足遅いくせに。
そして、3年目から経営が黒字になり、かなりの利益があってウハウハである。
ジムには現役時代の知り合いがやって来たり、オフシーズンは若手が自主練出来る所もあるので、知名度もある。
俺はまだ身長が伸びる予定なので、ジムはあまり使ってないがいつかしっかり活用したいものである。
そして今年から、元々持っていたアマチュア指導資格もあり、龍宮高校の不定期コーチもやる予定である。
至れり尽くせりなバックアップ体制に家族にも感謝であるが、この家族にしてくれた管理者さんにも感謝である。
母は三波沙雪。
父さんほどぶっ飛んだ経歴はないものの、現役時代はトレーナーをしていて、俺も面倒を見てもらっている。
というより、シニアメンバーの主力選手のほとんどは母さんに栄養管理やトレーニングメニュー等相談に乗ってもらっている。
元々は高校時、父さんの学校のマネージャーをしていたらしいが、在籍時に交際を始め父さんが高卒でプロ入りすると、母さんは体育大学でトレーナーの色々を学び母さんが大学卒業時に結婚。
そこから二人三脚でやって来たようで、お酒が入ると毎回のように惚気を聞かされる。
親の惚気程きついもんはないね。
いや、自分の彼氏のBL本を書いて感想を求めてくる奴よりマシか。
どっちもどっちだな。
母さんも今年からトレーナーとして不定期で高校の指導してくれるらしい。
ありがたい限りです。
妹は三波神奈。
天使。ただただ可愛い。それだけである。
今年で中学2年生。
思春期なのか、反抗期なのかお兄ちゃんに最近冷たい。
とても悲しいです。
一家の影響で野球にかなり詳しいが自分でやる程好きではない。
マネージャーならやろうかなというレベル。
「さすが父さんだな。人だかりが凄い」
家族の元に向かうと有名人だけあって、結構囲まれていた。
これが有名税ってやつか。
「おー、豹馬! 来たか! すみません、息子が来たのでこの辺で」
「さすが有名人だね。あまり羨ましいとは思わないけど」
「ははは。そこは慣れだな。長く続けてると上手いあしらいも出来るもんさ。さ! 写真撮ろう! 母さんがこの日の為に高いカメラ買ってたぞ」
「豹馬ちゃんの晴れ舞台だもの。私だって気合い入れちゃうわ」
「ありがとう、母さん。でも、もう高校生なんだからちゃん呼びは勘弁してほしいな」
「豹馬ちゃんは豹馬ちゃんよ。さ、並びましょう。しっかり練習して来たんだから」
父さんと母さんと、喋りながら門の前に向かう。やはりみんな考えることは同じなのか、結構順番待ちが出来ている。
「今日はそのまま部活か?」
「そうだよ。まぁ今日は顔合わせと紹介みたいなもんだと思うけど」
「俺と母さんは明日から行く事になってるなー。どんな子がいるのか楽しみだ」
「そうねぇ。でもシニアの子達もいるし、そんな真新しさはないのかしら? 鍛えがいがあると良いのだけど」
父さんと母さんは2人揃って育成厨である。
なんで今までコーチにならなかったのかというレベルで育成する事に楽しみを見出している。
まぁ、俺のサポートをしてくれてたせいであると思うのだが。
家に遊びに来ていたシニア連中は大概、両親の毒牙にかかっているが、そのお陰で何人かすんごい奴が出て来たりしてるので結果オーライである。
「春休み練習参加させてもらった時に何人か凄い人はいたよ。普通に甲子園を目指せそう。まぁ東京は激戦区なんだけど」
「それは楽しみだなぁ。俺は結局甲子園には行けなかったからなぁ。それだけが野球人生の心残りだな」
「そうねぇ。あの時のあなたはギャンギャン泣いてたものね」
そう。あれだけプロで華々しい活躍をしていた父さんは甲子園童貞なのである。
まぁ、甲子園に行ってないのに高卒でドラフト2位は中々凄いと思うのだが。
とりあえずの俺の目標は父さんが行けなかった甲子園に行く事。
ここまでサポートしてくれた両親の為にも俺の今後の野球人生の為にも甲子園に行きたい。
それに甲子園プレイヤーはモテるのだ。
そんな事を考えながら写真撮影に向かった。
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