第22話 VS八王学園4
1番のウルは狙っていたのか、チェンジアップにタイミングを崩される事無くヒット打ち、出塁。
そして、すかさず初球から盗塁。
ノーアウト2塁でバッターはタイガ。
タイガは打席からウルにサインを送る。
初球を見逃して2球目。
ウルはスタートを切る。
小技も上手いタイガはセーフティバントを三塁方向に転がし、慌ててサードが出てくる。
サードが捕球し、ファーストへ投げた瞬間、ウルは三塁を回りホームへ快速を飛ばして走り込む。
ファーストが途中でカットしてホームへ返球するも、既にウルは滑り込んでいた。
「キャッチ!! セカンド!!」
キャッチャーが項垂れている間にタイガは悠々と二塁を陥れていた。
待望の追加点である。
「ウル! ナイスラーン!」
「うぇーい!」
シニアの時に良くやってた奇襲を今回も上手く成功させたウルはハイタッチで迎える。
こいつマジで足速いな。馬鹿だけど。
これは観客席で見てる妹もニッコリではないでしょうか。
そして、観客席を見てみると、妹とレオンの妹の渚ちゃんがキャッキャしてた。
おぉ。渚ちゃん、久々に見たけど物凄く綺麗になってる。
かっこいい所を見せたかったぜ。
まぁ、レオンの妹に手を出したらコンクリ詰めにされて東京湾に沈められるからダメだけど。
そして、その続くレオンは前の打席にフェンス直撃のツーベースを打ってるからか、勝負を避け気味の四球で歩かされて、ノーアウト1.2塁。
だが、うちの4番と5番は打点乞食である。
キャプテン、隼人の連続タイムリーで更に2点を追加して、7ー0でこの回を終える。
「あれ? この回0で抑えたらコールドじゃね?」
「あぁー。言っちゃった。金子のプレッシャーになるから言わなかったのに」
俺がいま思いついた事を呟いてしまうと、タイガが呆れた音色で非難してくる。
チラッと金子を見るとそれ相応に緊張してるように見える。
仕方ない。
ここは言ってしまった手前俺が緊張をほぐしてあげよう。
「大丈夫だ。金子。もし打たれて、点を取られたとしても長いイニング投げれるとポジティブに考えろ。試合で投げたかったんだろ? 丁度良いじゃねぇか」
「そ、そうだよね! 大崩れしない様に投げてくるよ」
「タイガのリード通りに投げて、打たれたらタイガのせいにしたらいいんだ。簡単だろ?」
「ありがとう! 豹馬! 頑張ってくるよ!」
結論、金子ちょろい。
女を前にした俺ぐらいちょろい。
ちょっと心配になるな。
そして、七回裏のマウンドに上がった金子は良い感じに緊張がほぐれてる様にみえた。
幸い、相手は下位打線。
代打攻勢で来るだろうがこれだけ点差がついてるんだ。
恐らく思い出代打だろう。
かなり肩に力が入ってる相手にバッターへの初球はスローカーブから入った。
相手は気合いが空回りして豪快な空振り。
まぁ、代わりっぱなだし、ストレートだと思ってたんだろう。
タイガの性格の悪さが滲み出てるリードだ。
続く2球目も、スローカーブ。
完璧に相手を馬鹿にしてるリードである。
バッターは手を出さなかったがストライク。
あっさりと追い込んだ。
3球目は先程までとは、打って変わってスピードのあるパワーカーブ。
同じ様な軌道からのカーブにバッターは面を喰らった様に三振。
簡単にワンアウトである。
2人目のバッターにはストレートで押して行く。
そんなに球速が出てる訳ではないが、さっきとのギャップにやられて随分振り遅れてる様にみえる。
そして、ファーストゴロに抑えてツーアウト。
後1人である。
金子は油断する事なく、最後のバッターをストレートとカーブで抑えてショートゴロ。
隼人がしっかり捌いてゲームセット。
最初は強豪校と当たり、下馬評では龍宮高校不利だったが終わってみれば七回コールドの圧勝である。
整列では八王学園の選手達はみんな泣いていた。
最初に舐めプしていたのを後悔してるんだろうな。
まさか初戦で負けるとは思ってなかったのだろう。
一発勝負の高校野球の怖い所である。
俺達はこうならない為にもしないとな。
気を引き締め直していこう。
こうして、俺達龍宮高校の2回戦が終わった。
次は、いよいよ俺の高校野球公式戦初先発である。
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