第66話 魔球
「てってれー! 三波豹馬は新たに魔球を手に入れた」
秋のブロック予選を波乱も無く勝ち進んだ龍宮高校。
明後日に本戦の抽選を控えた練習で俺は新しい武器を手に入れた。
「どうよ! これ、多投は出来んけど使い分けたらいい感じじゃない?」
「コントロール出来るの?」
「それは、今からです」
怪我して練習出来ずに悶々としてた頃に動画を漁ってたけど結局諦めたんだよね。変化球は。
変化球は無理ならストレートはどうよと思って、キレを上げる為にストレートの回転数を上げる事にしたんだ。
俺のストレートの平均回転数は2200ぐらい。
ほぼサイドスローから投げる都合上、手首を立てるのが難しくて負担無く投げられるのがこれぐらいの回転数だった。
正直、これでも抑えれると転生する前は思ってたんだよね。仮想敵は抑えれてたし。
でもいざ転生してみると、レオンみたいなバケモノはいるし、白馬君みたいな厨二病もいた。
俺の体がまだ出来上がってないとはいえ、流石に焦るよね。
相手もまだ高校生でこれからも成長するわけだし。
で、ストレートの回転数を上げる為に無理矢理手首を立てて投げてみたんですよ。
幼少期からの訓練のお陰で、手首の柔らかさには自信があるしね。
フォームに影響が出ないように、そして万が一にも手首を痛めてしまわないように、慎重に練習した結果ストレートの回転数が2700ぐらいのボールを投げられるようになった。
これで回転数を上げたストレートはホップするような錯覚するボールになった。
コントロールはまだまだ甘いし、投げ過ぎたら手首痛めるから多投は出来ないけど。
「これ、爪の管理をより一層しっかりしないとな。指先で思いっ切り弾くからすぐ割れそう」
「球速も変わらないようにしないとね。普通のストレートと球速が違いすぎると意味がないよ」
回転数を上げる事が出来てもまだまだやる事がいっぱいあるね。
やる事がいっぱいあるという事はまだまだ成長出来るって事だし喜ばしい限りだけど。
「うーん。やっぱり怪我する前の状態とは程遠いな」
「球速も140キロでてないしね。そもそもそんな投げ方でこの速度が出てる事がおかしいんだけど」
「ランディジョンソン様がいるだろうがよ」
俺の大ファンのランディジョンソン。
多分前世でもファンなんだよね。
前世での家族やら、友人、有名人を全く思い出せないけど、投げ方がそっくりすぎる。
トルネード投法じゃなかったら丸々パクりと言っても過言ではない。
その大ファンのランディジョンソンが160キロ超え出してるんだから何もおかしくはないのだ。
「多分、秋季大会中も筋肉は戻らんだろうな。騙し騙しやってくしかない」
「うーん、投手力不足。金子も3年になる頃にはいい線行ってると思うんだけどね」
「タイガ君のリードにかかってますな! 頑張ってくだされ!」
「パンも手伝うんだよ!」
すみません。正直、今は自分の事で精一杯です。
ストレートのコントロールをもっと上げないと使えないし。
相手打者のデータ解析ぐらいなら手伝います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます