第253話 チート一家


 「次は東海大か」


 「それに勝っても創英か国無舘。やっぱり東京は魔境だね」


 東海大は初めましてかな。神奈川の方とはやった事あるけど。今、部室で映像を見てるんだけど、やっぱり強い。特にクリーンナップが強力だ。三兄弟なんだよね。東海大の弾呉だんご三兄弟は西東京では有名だ。


 長男の三年生で4番弾呉一政。次男三男は双子で二年生、5番の次男弾呉健二。三男の3番弾呉三輝。


 「今年はこれに四人目が加わってるんだよ」


 「両親頑張り過ぎだろ」


 で、これに今年一年で入学した四男のピッチャー四季がベンチ入りしてるらしい。

 ここまでもリリーフで登板していて、未だに失点なし。将来有望なピッチャーなんだろう。


 「弾呉四兄弟になった訳か」


 「なんか惜しいよね」


 人の名前で遊ぶなって言いたいけど、気持ちは分かる。弾呉三兄弟の方が語呂は良かった。


 「でも全兄弟野球が上手いって凄いよな」


 「強豪校でレギュラーだもんね」


 みんながみんな野球をやって、それでいて全員センスがあるって奇跡だよね。

 素晴らしい遺伝子じゃん。


 「まだ下に中学生三年生の弟と、小学生の双子姉妹がいるらしいよ」


 「待て待て」


 ほんとか? 嘘だろ? 人間ってそんなに子供を産めるの? 全員で七人? 物凄い家庭だな。ってか、タイガはどこからそんな情報を仕入れてきたんだ。


 「その弟も野球をやってるみたいだね。シニアで強打者として知られてるみたい。その子も来年東海大に入るなら、また弾呉四兄弟になるよ」


 「ほえー。すげぇとしか言いようがない」


 完全な野球一家ってか。七人も子供がいて全員に野球をやらせてあげる経済力も凄いけど。どうしてもお金がかかるからね。

 俺は父さんがレジェンドプロ野球選手で、引退してからのスーパー銭湯やジムの経営が上手くいってるから、かなり恵まれてるんだけど、普通は一人の子供を養うのに、とってもお金が掛かるもんなんだ。


 「まさかと思うけど、その小学生の双子姉妹も野球をやってたり?」

 

 「えーっと、ちょっと待ってね」


 タイガはそう言いながら携帯をぴこぴこして何かを調べてる。いや、弾呉一家の情報ってネットに転がったりしてるの?


 「あ、これだ。長女の方は小学生4年生で将棋の全国大会みたいなので優勝してるね。公文杯ってやつ」


 ほ、ほう。将棋か。俺にはそれがどれだけ凄いのか分からないけど、将棋の世界も人外魔境だって聞きますよ? 小学生の大会とはいえ、優勝するのは凄い事なのでは?


 「次女はゼロワングランドスラム? なんだろうこれ。………へぇー。プログラミングの小学生全国大会で優勝してるよ」


 プログラミング? パソコンで何かやるのかな? いや、それよりも。


 「それはどこから調べてるの?」


 「動画サイト。弾呉七兄妹ってチャンネルで週に2.3回動画が上がってるよ。登録者30万人を超えてる」


 人気じゃねぇか。もっと早く言ってくれよ。早速見させてもらう。


 ………ほうほう。野球に関する専門的な事や、将棋の事について。はたまたパソコンに関する小難しい事を幅広く動画にしてる。

 たまに配信者らしい事もやってるけど、普通に面白いな。チャンネル登録ぽちー。


 「なんなの弾呉一家は。チート一家じゃん。物語にありがちなチート一家じゃん。両親も何かやばいの?」


 ここまで来ると両親の事が気になる。

 こんなチート一家の両親が只者な訳がないだろう。


 「父親は有名でしょ。俺でも知ってるプロゴルファーだよ」


 「む?」


 そう言われて俺は携帯をぽちぽち。

 賞金ランキング5位とな? これは凄いんだろうか。ゴルフについて全く詳しくないので、良く分からんのだが。プロ野球選手はゴルフはみんなやってるけどね。

 俺は父さんに連れられて一回打ちっぱなしに行ったぐらいしか経験がない。


 「あー見た事ある…か…も?」


 待て待て。今写真を見てびっくりした。

 俺が日本に帰って来てまもない頃に、父さんと打ちっぱなしに行ったんだけど、その時にこの人も居たような? 滅茶苦茶見覚えがあるんだが? 弾呉って名前だっけ? ちょっと記憶があやふやでやんす。


 「母親の情報はないね」


 「なんかそれもそれで怖いんだが」


 ラスボス的な? もう何かの社長とか言われても驚かないね。東海大の映像を見ていた筈なのに、弾呉一家のチートっぷりをこれでもかってぐらい分からされた。


 とりあえず帰って父さんに弾呉さんのサインを貰えないか聞いてみよう。

 

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