第189話 発熱


 「交通事故だよね、あれは」


 「貴様まで言うか」


 試合後に白馬君と会って話をする。

 今日の敗因は俺が打った事らしい。

 絶対違うと思う。


 「秘密兵器も不発だったなぁ」


 「アンダースローはみんな霊山で慣れてますからね。もう少し完成度が高かったら苦戦したかもしれないですけど」


 「冬から頑張って取り組んできたけど、まだまだ足りないか。龍宮打線は強過ぎるよ」


 「それは俺も思います」


 ほんと、うちの打線と勝負しないでいいのは幸せだよね。みんなを引き抜いてきて良かったぜ。


 「豹馬君から点も取れなかったし。夏も苦戦しそうだなぁ」


 「俺は白馬君に打たれてますけどね」


 「あははは」


 笑うでない。俺は気にしてるんだぞ。

 まさしく試合に勝って勝負に負けたって感じだ。

 大天狗になってる所だから丁度良かったぜ。

 これからきっちり鍛え直していかねばなるまい。



 渚ちゃんに試合に勝ったよー報告をして打点を挙げた事も報告したんだけど、滅茶苦茶心配された。

 彼女にも俺が打ったらびっくりされるとは…。

 明日は熱とかに気を付けて下さいって…。

 俺が打つとそこまでの騒ぎになるのかね。なんだか悲しくなっちゃうぞ。

 たかだかツーベースを打ったくらいで熱が出る訳あるまいて。

 これでも体調管理はしっかりしてるんだぞ?







 「ゴホッゴホッ」


 翌日。

 熱が出ました。

 39.9°とかなりの高熱であります。

 どうせなら40°を記録しろよ。

 しんどいのにムキになって何回も計り直しちゃったじゃん。


 「ふざけるなよぉ。体調管理はバッチリだったのによぉ」


 喉が痛い。体の節々が痛い。頭が痛い。気持ち悪い。

 今日は土曜日という事で学校を休む事は無かったけど、当然練習は不参加だ。

 白馬君に打たれて鍛え直すぞって時に。くそったれめ。


 「入るわよー」


 マスクをした母さんが部屋にやってきた。

 その手にはおかゆ。素晴らしい。丁度何かを口に入れたいと思ってた所だったんです。


 「うぅ。喉が痛い」


 「それを食べたら病院に行くわよ」


 「あい」


 「病院で診てもらって薬を飲んだらすぐに寝ること」


 「あい」


 喉が痛くて飲み込むのも一苦労だ。

 母さんが何か言ってるけど、ぼーっとし過ぎて頭に入ってこない。

 とりあえず適当に返事だけはしてるけど。


 「全く。打つたんびに熱を出す気じゃないでしょうね? それならもう大人しく三振しときなさい」


 「ふぐぅ」


 それは聞き捨てなりませんぞ。

 なんか脳みそが一気に覚醒しちゃったよ。

 ママ上までそんなオカルト染みた事を仰るか。

 偶々に決まってるだろう。そうじゃなきゃ、これはもう呪いじゃんかよ。


 「一人で着替えられる?」


 「あい」


 「そう。じゃあ車回してくるから。食べ終わったら来てね。食べ切れない分は残しておきなさい」


 「あい」


 何から何まで申し訳ありませぬ。

 お手数おかけしますね。

 献身的なサポートをしてくれる両親には感謝しかありません。

 本当にありがとうございます。

 

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