第188話 VS松美林3


 三回裏。

 大浦、隼人、清水先輩の三連続タイムリーで龍宮が先制した。

 サウスポーのアンダースローにギリギリの所で粘られてたけど、ようやく攻略出来た感じだな。


 しかし、松美林は清水先輩にタイムリーを打たれた所で投手交代。

 軟投派サウスポーの先発とは違って、次に出てきたのは本格派の右腕だった。

 松美林も強豪って事で、優秀な投手を抱えている。


 「遅い球に散々慣らした後は速い球か。揺さぶってくるなぁ」


 「多分向こうの先発は最初から三回でお役御免だったんじゃないかな。緩急差でうちを抑えようとしてたんだと思う」


 「なるほど。まっ、俺には関係ないけどさ」


 速かろうが遅かろうが当たらん。

 なんでここまで打撃にセンスがないんだろうか。

 目の前で敬遠されても仕方ないと思っちゃうよね。


 ツーアウト満塁。

 ここで迎えるは奇跡の三振マシーン、三波豹馬である。終盤なら代打を出されるだろうけど、まだ三回。監督も苦渋の表情で俺を送り込んでいる。流石にそんな表情されると俺も傷付くよ?


 いつもの様にアウトコースへのストレートにヤマを張ってバットを振ると、なんと3球目でバットに当たった。


 「え? 当たったよ」


 打球はグングン伸びてフェンスに直撃。

 走者一掃のスタンディングダブルである。


 「なんで球場が静まり返ってるんですかね。ここは歓声に湧くところなんだけど」


 ほら。打たれた投手も信じられないみたいな顔しない。俺だってバットを持って打席に入ってるんだ。たまには当たるってもんよ。


 味方ベンチなんて虚無だよ。虚無。

 まぁ、俺が打ったのなんていつぶりって話だしなぁ。自分でも思い出せないや。



 俺の走者一掃タイムリーで6-0。

 続くウルは俺が打った衝撃から抜け出せてないのか、ボール球をあっさり振って空振り三振。

 三回裏の攻撃が終わってしまった。


 「おいおい。相手投手も焦ってたんだから、落ち着いて畳み掛けるチャンスだっただろうよ」


 「パンが悪いよ。今年一びっくりした。ほんとやめてよね」


 自分が三振したのを俺のせいにしないでくれる? なんで打ったのに怒られないといけないんだ。褒めてくれよな。


 「豹馬大丈夫か? 慣れへん事してピッチングに影響はでんやろうな?」


 「むしろ絶好調っす」


 そんなガチで心配されたらもう何が正解だったのか分からなくなってくるよね。

 大人しく三振しとけば良かったんだろうか。


 俺の言葉通り、ピッチングも絶好調。

 六回表に白馬君の打席が回ってきて、ツーベースは打たれたけど。

 マジでこの人、打席を重ねる度に成長してないかな。三高とか桐生に行ってたらやばい事になってたかも。松美林は強豪だけど、白馬君のワンマンみたいになってるし。


 で、そのまま試合は進み、結局8-0の七回コールドで試合は終了した。

 あの後、レオンと大浦が一本ずつホームランを打ちました。


 俺は結局は打たれたのは白馬君に打たれたヒット二本だけ。三振も二桁超えの11個。

 結果だけ見たら悪くないんだけど、白馬君にはしてやられてるよね。こんなんじゃ、世界一の投手には程遠い。もっと精進せねばなるまい。


 あ、因みに俺の三.四打席目は三振ね。

 何故かそれを見た味方ベンチがホッとしてたのは癪に触ったけど。

 偶に打った時ぐらい褒めてくれもいいんじゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る