第81話 VS秀徳4
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龍宮高校6番の清水はかなり気合いが入っていた。
前キャプテンの北條を尊敬して筋トレに励み、夏の大会ではほとんど出番がなく、秋から新チームになった時。
ファーストの北條の後釜に座り、意気揚々としてた。
浅見が3番を打つなら、4番を任されるのは自分か岸田だと思っていたのだ。
しかし選ばれたのは、岸田でも自分でもなく、1年の大浦。
龍宮高校は、豹馬が連れて来た1年におんぶに抱っこの状態。
清水はそれを悔しく思っていたが、シニアでも有名で全国ベスト4の実績があった事もあり、ある程度は納得していたのだ。
だが、大浦は違う。
一般入部で、中学の時も特に実績のなかった、突然覚醒したイレギュラー。
体格はお世辞にもスポーツ向けとは言えず、自分よりも10cm以上身長が低い。
キャプテンの後を継ぎ、4番を打ちたかった清水は、最初はかなり妬ましく思っていた。
勿論、勝負の世界なので表には感情を出さず、大浦も裏表の無い性格で練習も真面目にしていたので、普通に仲良くしていたが。
(パワーでは負けていない。現時点で打撃センスは大浦の方が上かも知れんが、俺にだって先輩としての意地がある)
清水はまだ、4番の座を諦めていない。
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「おー。清水先輩の目がギラついてる。肩に力が入ってる様にも見えるし、空回りしてなきゃいいけどなー」
清水先輩はね、ストレートには滅法強いんだけど、変化球がまだぶんぶん丸だからな。
ここまでの成績で相手もそれは分かってるんだろう。
ストレートは臭い所にしか投げず、ゾーンには変化球主体で攻めている。
変化球を上手くカットして、ストレートを待てたら一段階レベルアップするんじゃないかな。
え? センスの無いお前が言うなって?
父さんが言ってたんですぅー。
俺もそこまで自惚れてませーん。
で、その清水先輩は追い込まれてから、5球粘ってるわけですが。
普通にカット出来てるくね?
ちょっと不恰好かも知れないけど、良い感じなのでは? と、俺は思います。
これなら大浦が4番じゃなくて、清水先輩でもいいよね。
大浦は2番で使おうかという案もあったんだ。
メジャー流に則って、2番に強打者を置くやつね。
足もそれなりに速いし。
今のタイガは6番辺りで楽に打った方が良いんじゃないかなと、個人的は思っている。
高校に入ってから伸び悩んでるみたいだし。
今大会4割打ってて伸び悩んでるとか、俺からしたら羨ましい悩みだけどな。
本人にしか分からないよね、こういうのは。
そして、合計で8球目。
粘られて痺れを切らしたのか、スライダーが真ん中付近に抜けて来たのを、清水先輩は見逃さずバット一閃。
打った瞬間それと分かる特大のホームラン。
少し打ちあぐねていた、イライジャから値千金のグランドスラムである。
「うおおお! すげー!! 完璧な当たりじゃん!!」
ガッツポーズしながらダイヤモンドを回る清水先輩はとても先輩らしく、カッコよく見えた。
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