第311話 決勝進出


 試合は7-1で龍宮が勝利した。一二三少年が、逆転ホームランを打った後、松尾君は気合いで後続を抑えたけど、次の回から投手交代。


 そこからは龍宮打線が今までの鬱憤を晴らすかのような大爆発で、5点を奪取してそのまま試合は終わった。


 俺も六回から登板して、ランナーを一人も許さないパーフェクトピッチング。松尾君の凄さに当てられて張り切ってしまった。


 こうして無事に龍宮は甲子園決勝へと駒を進めたのである。


 試合が終わって、前回同様報道陣はスルー。本音は松尾君の凄さについて語りまくりたいところだったんだけどね。


 それに俺が褒めまくって、松尾君の進路を阻害してしまう可能性もある。誰も彼もプロを目指してる訳じゃないからね。


 俺の影響力がどれほどかは分からないけど、俺がそういう事を発信したせいで、松尾君に過剰に反応してしまうかもしれない。


 ほら、なんか良く言うでしょ。才能を持って生まれたなら、その才能の奴隷にならないといけないとか。松尾君がプロに行く気はなくて、プロの選択をしなかったら叩かれる可能性だってある。


 せっかく才能があるんだから、それを無駄にするのは良くない的な。本人がやりたくないのに、やらせるのはダメでしょ、普通に考えて。


 盗みの才能があれば泥棒にならないといけないのかって話よ。暴論だけどね。


 個人的には松尾君とプロで投げ合ってみたいと思うけど、その選択をするのは松尾君だ。俺は良い投手だと思ってるけど、プロで成功するかは分からないしね。


 プロは甲子園のエースや4番だけが集まってるような場所だ。魔境ですよ、魔境。俺は大活躍する気満々だけど、それでもこける可能性だってある。怪我とかするかもだし。


 ほんと、厳しい世界だぜ。




 「決勝はやっぱり桐生か」


 「春と同じだねぇ」


 俺達の試合が終わってから数時間後。

 もう一つの準決勝が終わって、決勝戦の相手が決まった。


 大阪桐生。

 春のセンバツと同じカードになった。


 「やっぱりなんと言っても打線だな。大鰐とドワイト。この二人を抑えれるかが鍵になりそう」


 「エースの尾寺もだよね。150キロを超えたらしいよ」


 ドワイトと大鰐、エースの尾寺。特に注意しないといけないのはこの三人だな。


 尾寺は春は140後半のサウスポーだったけど、今大会で151キロを計測してる。


 それにスライダーのキレが良くなってるな。春は変化量は大きかったけど、うちの打線なら打つのは問題なかった。俺以外はね。


 コントロールも未だに日によってばらつく傾向にはあるけど、それも改善してきてるときた。やっぱりこれぐらいの年代は伸び代がすごいよなぁ。


 「先発は三井。打線は今日とおんなじや。ここまできたんやから、春夏連覇するで」


 「当然」


 先発はキャプテン。いつもならやいやいと俺がアピールするところだけど、素直に譲る。俺も大人になったのです。


 実はこのミーティングの前に散々駄々こねたのは内緒ですよ? まあ、俺の提案が通らないのは分かりきってたけどね? やっぱりポーズは必要かなって。


 一応いつでも継投出来る準備はしておくけどね。今大会、キャプテン絶好調だからなぁ。ドラ一アピールの為に気合いが入ってるし、出番がないかも。


 キャプテンに活躍して欲しいけど、それをすると俺の出番がない訳で。


 これがジレンマってやつか。


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 以前近況ノートで言ってた非公開にした過去作を再アップしました。


 『鏖殺』のジャスミン


 良かったら見て下さい。

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