第212話 試合後
「詰めが甘いよね」
「む…」
「相手のバッターを見て油断したよね? 後でプリンスにも言っておかなくちゃ」
「むむ…」
「ざまぁ」
「むむむ…」
「せっかく渚の前だったのになぁ」
「ぐはっ!」
試合後。上から、ウル、タイガ、レオン、隼人の順にダメ出しを食らった。
こやつらめ。ここぞとばかりに口撃してきおって! 浦和高校相手に一安打完封、20奪三振。
もっと褒めてくれても良いじゃないか!!
ノーノーなんてそんなポンポンと出来るもんじゃないんです!!
「それにしても今日は一二三に助けられたな」
「だねー。打線が沈黙しちゃったよ」
「相手の増田が良かったとはいえ、もう1.2点は取って欲しかったよね」
俺を煽ったら用は無しとばかりにこいつらは今日の試合の反省会を始めた。
俺の扱いが雑すぎませんかねぇ。
「もっと打撃練習に力を入れるべきじゃないか?」
「幸い豪華なバッピは揃ってるしね。監督とコーチに進言しておこうか」
マジで俺の事無視じゃん。
こいつら、俺の事をなんだと思ってるんだ。
俺だって傷付く心を持ってるんだぞ。
「私も最近はブルペンでの練習に付き合いっぱなしでしたからね。次の練習からは打撃の方も注意して見ておきましょう。勝弥さんがいるからあんまり心配はしてませんが」
「輝夜さんの指導は分かりやすいからね。テコ入れしてくれるのは助かるかな」
ここで話に入ってきた輝夜さん。
次からは打者陣の方に注力するって言うと、キャプテンが絶望感丸出しにしてるけど。
チームの為とグッと堪えてるみたいだ。
さっさとアタックすればいいのに。散々告白するのにチキッてた俺が言う事じゃないけど。
「パン君〜!」
「渚ちゃんだ!」
「ちっ」
会場の外で駄弁っていると、渚ちゃんと大人の女性がやってきた。
手を振りながらこっちにやってくる我が彼女の可愛さよ。数値がグレンラガンしてやがる。
レオンが舌打ちしてるけど全然気にならないね。
「パン君惜しかったですね〜」
「せっかく見に来てくれたから良いところを見せたかったんだけどね。最後の最後にやられちゃったよ」
後ろの女性には軽く会釈だけして、渚ちゃんと話しをする。
マネージャーさんかな? 見た事ない人だ。
「パン君こちらの女性は〜?」
上機嫌に話してたら、急に渚ちゃんの目がスーッと据わって輝夜さんを見る。
おお。普通に怖い。そんなやましい関係じゃないのよ?
「豹馬君の彼女さんですね? レオン君の妹さんだとか。私、龍宮高校野球部でコーチをさせてもらってます、龍宮輝夜と申します。豹馬君とはいとこ関係ですね。これからよろしくお願いします」
輝夜さんはくそ丁寧にご挨拶。
渚ちゃんが据わった目で見てるのも気付いてない模様。
「浅見渚です〜。こちらこそよろしくお願いします〜」
いとこって分かると目が普通に戻った。
危ない所だったぜ。女同士の争いでも始まるのかと。いや、俺を巡ってとか、そんなラブコメ展開は自惚れすぎか。
危うく俺がモテ始めたのかと勘違いする所だったぜ。
大体俺は渚ちゃん一筋ですし? チヤホヤされるのは嬉しいけど、それとこれとはまた別ですよ。
でもでも、渚ちゃんが勘違いしてしまうかもだし、女性とは距離を置くべきか。
マリンと輝夜さんぐらいしかまともに話せないけどね。
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明日は掲示板。
多分二日連続で続くと思われ。
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