第52話 合宿開始


 西東京大会決勝戦が終わった翌日。

 今日からわくわく合宿の始まり。


 といっても初日は、改めてなんの為にこの合宿をするのかの説明。

 そして、寮の部屋割り等を決めて、投手の適正審査である。




 「じゃあ、みんな順番に投げてみようか。あ、レオンは大丈夫だよ」


 「む? なぜだ? 俺は今日割と楽しみにしてたんだが?」


 なんでやる気満々なんですかねぇ。

 俺がプロで4番打つのとおんなじレベルでありえないよね。


 「いいから! お前は俺とこっち!」


 俺とキャプテンはキャッチャーの後ろに立ってボールを見る。

 しょぼんとしてるレオンを引っ張って連れて来る。


 「俺だってやれる筈なのだ」


 「ストライク入んないんじゃ試合にならんのよ」


 レオンは地肩が強いので球速自体は速い。

 だが、恐ろしい程にノーコンである。

 サードからは綺麗にファーストに投げれるのになぜなのか。


 それから、順繰り投げていくがやはり誰もが平均的。

 しかし、1人異彩を放つ選手がいた。

 同級生で1年の大浦。

 彼は身長が165cmと小柄な選手で中学2年の頃で身長の伸びが止まったと嘆いていた。


 「大浦のあれ、タイミング取り辛そう」


 「テイクバックが小さいのか。その割には球速もそこそこ出てくるが」


 「ふむ。ちょっと打席に立ってみるか」


 レオンが実際に打席に立って確かめる。

 なんであの投げ方で130キロでるんだろう?

 かなり投げ辛そうなのに本人は普通にしてる。 

 サウスポーってのもポイントが高いよね。


 「いや、普通に投手出来そうじゃん。なんで外野やってんの?」


 「本人的には投手はデカくないと駄目という固定概念があったみたいですね。そんな事ないのに」


 小さくても成績残してるプロ野球選手もいるしね。

 なまじバッティングにセンスがあったから余計ピッチャーには興味を持てなかったんだろうな。


 「レオン、どうだった?」


 「確かにタイミングが取り辛いが慣れてしまえば普通だな。だが、変化球を混ぜれば良いピッチャーになるんじゃないかと思う」


 そんなにすぐ慣れるのは君だけじゃないのかね?

 

 「なら、大浦を即席ピッチャーに仕立て上げるか。本人の意思もあるけど」


 

 


 「やってみるか、大浦?」


 「ええ!? 自分がっすか!? あんまり自信ないっすよー!!」


 なんだろうね、この下っ端感。

 先輩でも同期でもこの口調なんだよね。

 なんか安心する。


 「見た感じ普通に通用しそうだったけど?」


 「この身長っすよ? 豹馬っちみたいにデカかったらよかったんすけど」


 豹馬っち? 初めて聞いたな。たま○っちみたい。


 「いやいや。ろくに教えてないのに130キロでてんじゃん。プロで大浦と一緒ぐらいの身長で200勝に到達しそうなレジェンドもいるしさ」


 「えぇー。そう言ってくれるのは嬉しいっすけど、最近打てる様になってきてバッティングが楽しいんすよね」


 そうなのだ。

 大浦は夏の大会が始まった辺りで練習でやたらと飛ばす様になってきて、3年生が引退した後のレギュラー争いで猛アピールしていたのだ。


 「何も専業でやれって言ってるんじゃないんだ。この秋、キャプテンと俺が間に合うか分からないからさ。金子1人じゃ潰れちゃうだろ?」


 「まぁ、確かにカネコンが可哀想っすね。しゃーないっす。やれるだけやってみるっすね」


 カネコン? ゼネコンみたいだな。

 こいつは人に変なあだ名を付けるのが好きなのか?


 ともかく、やる気にはなってくれたので、この合宿でなんとかやれる様に教えていこう。



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いつも応援ありがとうございます。

初めて近況ノートを更新しました。

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メインの更新はこちらですので連載が止まる事はないのでご安心ください。

これからもよろしくお願いします。

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