第142話 4番ピッチャー
「うぅ。緊張するっすー」
「そりゃそうだろうな」
準決勝第一試合。
先発に抜擢されたのはなんと大浦。
俺達、龍宮高校は後攻なのでまっさらなマウンドに向かう事になる。
「投げる機会はあるかなと思ってたっすけど。まさか先発とは思わなかったっすよー」
「監督もチャンレンジャーだよな」
舐めてると言われても仕方ない。
どこかで投げてもらう予定だったんだけど、なんだかんだ今まで機会が無かったからな。
ある程度点が取れる事を見込めるここでしかチャンスは無いと思ったんだろう。
「4番ピッチャーだぞ。主人公じゃないか」
「全然嬉しくないっすよー」
俺がこの先絶対出来る事はない、漫画の主人公的な展開じゃん。
監督がどんなにチャレンジャーでも俺を4番にする事はないだろう。
もしかしたら打撃開花すればワンチャンだが。
自分でも諦めてるから。俺が打撃開花なんて、宝くじ一等に当選したするよりあり得ないね。
「打たれても自分で取り返せばいいだろー。お前にはそれが出来るんだから」
「そうっすけどー」
一応球速も130キロ前半は出てるし、ムービング系の変化球も悪いボールではない。
まぁ、ストレートはキレがないというか、棒球気味だから打たれるんだけど。
ある程度強い高校相手には丁度良いバッピみたいになっちゃうんだよね。
「不安になったらとりあえず動かしていけ。それで大怪我は避けられるはずだ」
「思ったんすけど、そこまで無理して俺が投げなくても良くないっすか? 豹馬っちとかまだまだ余裕があるっすよね?」
「万が一があるだろうがよ。夏の予選の時みたいに怪我する可能性がないとは言えん。比較的楽に投げれる時に、甲子園の空気やらマウンドに慣れとかないとな」
「そう言われると仕方ないっすねー」
怪我はしない様に気を付けてるけど。
スポーツをやってる以上、予期せぬ怪我は避けられない訳で。
「まっ、今日は俺が初回から準備するからな。大船に乗ったつもりでどーんと投げてきたら良いよ」
「そうっすね。なんとか切り抜けられるように頑張るっす」
甲子園で投げれるのは幸せなことだぞ。
もしプロに進まないとしても、将来自慢出来るしな。
「野次は気にしないようにな。俺達には結構当たりきついから」
「野次はあんまり気にならないっす。チビチビ言われ続けてるっすからね」
あんまり笑えないよ、その冗談は。
人によっては、身長ネタは地雷になるんだから。
「豹馬っちと並んだら、大人と子供っすよね」
「俺もそろそろ止まるだろうけどなー」
「そこまで大きいと逆に不便じゃないです?」
設計おかしい所では、たまに頭とかぶつけそうになるな。
確か前に測った時は、197cmだった。
なんとか200cmの大台に乗せたいところです。
「よしっ! じゃあ行ってくるっす!」
「頑張れよー。骨は拾ってやる」
どこまで投げる予定かは、具体的には決めていない。行ける所までは行ってみようって感じだ。
それでも初回から準備はするんだけどね。
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