第286話 VS薔薇巻西2
「どうだった?」
「どうもこうも。駆け引きもなく馬鹿正直に勝負してきたから打っただけだ。また同じ事を続けてくるなら、もう一度スタンドに放り込んでやる」
ひゃー。強者のセリフすぎる。
レオンはまさかいきなりストレートをインコースに投げてくるとは思ってなかったらしい。
絶好球すぎて逆に詰まったとのこと。
次も同じならもう一回スタンドに放り込めると確信してるのが魔王ですわ。
薔薇巻西ナインは早速タイムを取って、マウンドに集まっている。まだまだ危険なバッターは続きますからねぇ。
そして仕切り直して4番の大浦。
チビだからと侮ることなかれ。レオンの後ろを打つというのは、かなりプレッシャーなはずなのだ。
レオンがどれだけ魔王でも、逃げられればどうしようもないのだ。レオンから逃げても後ろには小さな巨人がいる。そう思わせることによって、レオンと勝負せざるを得なくする訳だ。
生半可な成績じゃだめだ。
レオンと同等の成績を残さないと、絶対に勝負を避けられる。その役目は隼人が担う予定だったんだけど、予想外に大浦が出てきたからなぁ。
「ほんとこの打線はどうしようもねぇよ」
大浦が打った打球は左中間を切り裂くツーベース。ライナーの打球が甲子園のフェンスにあるクッションに突き刺さった。もう少し打球の角度が上がってたら、スタンドへ突き刺さって怪我人が出てたかもしれない。
そして5番の打点ジャンキー隼人。
得点圏にランナーがいるときのこいつはレオン並みに相手にしたくない。集中力が凄いんだろうな。得点圏限定ゾーンとでもいうべきか。
最近では関係なく打つけど、それでも打点ジャンキーは変わっていない。綺麗な流し打ちでライト前ヒット。大浦はホームに帰ってきて、これで4-0だ。しかもノーアウト。
最強龍宮打線の面目躍如といったところか。
清水先輩も単打で続いて、7番の一二三少年。一年でこの舞台に立てるのは非常に贅沢で恵まれているだろう。
後の事なんて考えずに全力で楽しんで欲しい。きっと良い経験になるはずだ。
かつて天才と言われてた一二三少年。
神主打法なんて使う物好きだけど、その実力は本物だ。感覚派の大浦を師匠と仰いで日々実力をメキメキと伸ばしている。
そして捉えた打球はファースト横のライン際。抜ければ更に追加点だったが、薔薇巻西のファースト薬師君がグラブの先っぽでギリギリ補給した。
そしてそのままファーストベースをタッチ。
不運な形でのダブルプレーになってしまった。
「うーん。これは仕方ない。ファーストがお上手でした」
一二三少年は悔しそうだけど、あれは相手を褒めるしかない。結果が全てって言ったらそれまでだけど、次は打てるんじゃなかろうか。
ツーアウト二塁になって速水。
こいつも一年で影は薄いけど、守備は一級品だし、東京予選での出塁率も悪くない。いずれはウルみたいな選手になるんじゃなかろうか。
そんな速水が粘って四球で出塁したものの、続くキャプテンがセカンドゴロに倒れて長い長い一回表の龍宮の攻撃が終了した。
「文句なしのスタート。これでキャプテンが薬師君を抑えたら心を折れるかもしれんな」
「どうだろうね? まだ初回だしまだまだチャンスはあると思って諦めないんじゃないかな」
それもそうか。
油断は禁物ってこったな。
キャプテンの大活躍に期待しよう。
ドラ一を目指すなら薬師君を封殺するのはアピールポイントになるはずだ。
向こうもキャプテンから打ってアピールしたいだろうし、面白い勝負になりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます