第269話 前日
「お邪魔します〜」
「はい、どうぞー」
決勝戦前日。
午前中に全体で軽い調整だけして、練習終了。午後はフリーという事で渚ちゃんとデートである。
と言っても場所は俺の家なんだが。
どこに行こうかって話をしてたんだけど、夏休みでどこに行っても人が多い。そして暑い。ちょっと外で出歩くのはだるくねってお互いの意見が一致した。
ならクーラーの効いてる家でゆっくりしようかってなったんだ。
「これの続きやってもいいですか〜?」
「あ、そのセーブデータ渚ちゃんのなんだ」
渚ちゃんが指差したのはゲーム機。
俺も偶にやってるけど、主にやってるのは神奈だ。受験があるってのに、あいつはいつもゲームしてる。龍宮を受験する予定で、安全圏らしいがそれでも余裕をかましすぎではと思わなくもない。まあ、可愛いから良いんだけど。
で、神奈と家で遊んでると渚ちゃんもハマったらしい。バイオでハザードなゲームなんだけど。
因みに俺はすぐにクリアした。俺って何故かゲーム全般がお上手なんだよね。
アプリとかも。ガチャ運はゴミだけど。
俺が何故かクリア出来ないのはプニキだけである。
逆に神奈は下手っぴ。
でも家族内で一番ゲームが好き。
「もう少しでクリアなんですよ〜」
なんて事を言いながら嬉しそうに、ゲームの準備をする渚ちゃん。
控えめに言って可愛い。なんかこういうの良いよね。THE日常って感じ。
外でデートするのも良いけど、こういう何気ない日常の一コマを彼女と当たり前のように過ごせるってのは素晴らしい事だ。
「パン君はこれをクリアしたんですよね〜? ネタバレはだめですよ〜」
「見てたら口からポロッと出ちゃうかもしれない」
メッ! ってやられた。
女神なんだが。最高なんだが。結婚して欲しいんだが。
「今日は私が料理しますよ〜!」
「ほほーう」
渚ちゃんはバイオなハザードを無事にクリアした。一回クリアしてエンディングも見たはずなのに泣いた。名作は何回見ても泣けるって事よ。
で、良い時間になってきたので、渚ちゃんが持ってきてたエプロンを装着して、ふんすと気合いを入れてらっしゃる。はい。可愛い。
今日は可愛いのバーゲンセールですわ。
因みに俺は料理は一切しない。
やろうと思えば出来るかもしれないが。
とりあえず野球をやってる間はやる気はない。手とか火傷したり、包丁操作を誤って切ったりしたら、プレイに影響が出る。
「材料も買ってきてます〜。肉じゃがですよ〜」
「おおー」
俺にはそれが簡単なのか、難しいのかは分かりませんが。でも肉じゃがは好きです。
甘じょっぱいというか、味のしっかり染みたジャガイモが好き。
「うんみゃい!!」
「良かったです〜」
渚ちゃんが作った肉じゃがはとても美味しかった。ご飯を何度でもお代わりしちゃうね。勿論、肉じゃがもお代わりした。
そしてこのほうれん草のおひたし。
なんか滅茶苦茶美味いんだが。
俺、こういうのには嫌いではないけど、ちょっと苦手意識があったんだよね。
だけど、びっくりするほど美味しい。勿論これもお代わりだ。
「いっぱい食べてくれて嬉しいです〜。皆さんの分もあるので良かったら勧めておいて下さい〜」
「俺が全部食べるかもしれん」
こんな美味しいんだもん。
全部ペロリといっちゃうね。
まあ、普通に無理だったんだけど。
「パン君明日の試合、頑張って下さいね〜。応援に行きますから〜」
「俺は先発じゃないけどね。出番があったら頑張るよ」
その後も軽く雑談して渚ちゃんを家に送る。玄関前で頑張って下さいねって言ってもらった。
これで明日の俺の調子は絶好調が確約されたな。
いよいよ明日は決勝戦。
甲子園に行けるかどうかの一年で一番大事な試合と言ってもいいかもしれん。
渚ちゃんパワーを補充して準備は万端。
霊山擁する三高をけちょんけちょんにしてやるぜ。
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