第268話 二日前
「やっぱり問題は霊山を打てるかどうかだよね」
「打線も強力だけど、やっぱりそこだな」
決勝戦を明後日に控えた龍宮高校の面々は練習終わりに部室で三高の試合映像をみていた。
明日は軽い調整の練習だけしてフリー。
俺ちゃんはデートの予定です。大事な試合前に余裕だなと思われるかもしれませんが、大事な試合前だからこそリフレッシュが必要なのです。甲子園に行ったら夏休みなんてほとんど遊べないからね。しっかりイチャイチャしないと愛想を尽かされてしまうかもしれない。
「140キロを超えるストレートもそうだけど、シンカーが気持ち悪い変化してるよね」
「マリンボールかよ」
「そんなびちゃびちゃしてないけど」
霊山の決め球のシンカーがとにかくキモい。なんかぐにょって感じ。言葉では表現しにくい変化をしてる。
「打線は1番の柳生と3番の砥川さんが厄介か」
「簡単に言えば白馬君とレオンが居るみたいな感じだよね」
まあ、流石にそこまでの実力じゃないだろうけどな。ざっくり言ってしまえばそうなる。柳生に関しては同い年だし、来年も戦う可能性があるんだよなぁ。
それでも東海大打線よりは怖くないと思う。キャプテンもあの打線よりマシと思えば楽に投げれるんじゃなかろうか。
「先制点はなんとか欲しいよな。相性の良いレオンがスパッと打ってくれたら話は早いんだけど」
「あくまで中学生の頃の話だ。今は最早別物だろう。簡単に打てるとは言えんな」
「おやおやぁ? レオンさんとあろうものが、随分と弱気ですねぇ?」
「黙れ。お前が相手なら何度でもスタンドに放り込んでやる」
え、なんか俺に対して当たりが強くないですか? レオンはそんな事言ってますけど、最近の打席勝負の戦績は俺が勝ってるからね?
体も出来てきたし、三年になったら無双しちゃうよ? 鎧の体を手に入れてウハウハフィーバーしちゃうよ?
「霊山のカーブとスライダーは狙い目じゃない? カウントを取ってくるのに投げてくるけど、シンカーほど一級品って感じじゃない」
「そうだけどね。アンダースローが投げられると軌道が違うから。慣れるまで苦労するんだよ。打てないパンには分からないと思うけど」
タイガまでなんだ? 今日はみんな俺に当たりが強いですね。決勝戦の前でナーバスになってるのかな? まあ、いつも通りっちゃいつも通りか。俺の扱いなんてこんなもんよ。
「球数を投げさせて疲労させようとしてもアンダースローだからなぁ。肩肘をそんなに損耗する訳じゃないんだよね。多少は効果があるだろうが、アンダースローは足腰の方が重要だから」
「すぐにバテるような鍛え方はしてないわな」
そうは言っても夏でこの暑さだ。
試合の日はこれでもかってぐらいの快晴で、三十度は超えるって天気予報で言ってた。投げて行くうちに体力は消耗するだろう。
「それはうちにも言えるけどね」
「まあ、この夏はピッチャー四人で回して、疲労は抑えてるからな。そこはうちに分があるだろ」
炎天下の中野球するって、ほんと地獄だよなぁ。いや、野球だけじゃなくてスポーツ全般か。サッカーも過密な日程で夏に全国大会とかやるらしいし。むしろサッカーの方がキツいだろ。日本はこういうのをなんとかしてくれないですかねぇ。
なんか苦しむのを美徳とか考えてる人が一定数いるよね。
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