第241話 キャップ野球 中編
「はい。これがバットね。100均で買ってきました」
用意したのは普通のプラスチックバット。
本当はなんかもうちょっと細いのを使うみたいたが。見当たらなかったので、これにしました。
まぁ、本格的にやる訳じゃないから別に良かろう。
「これは普通にキャップを打つだけなの?」
「動画を見た感じそうだな。走る必要もない」
ピッチャーが投げるところにテープで線を張るみたいだな。
で、このラインを超えたらヒット。
転がって後ろにあるネットに当たったらツーベース。ネットにノーバウンドで直撃したらスリーベース、ネットを超えたらホームランって感じだ。
「守備はー?」
「外野に二人かな? 動画では。で、このピッチャーのラインを超える前に捕球出来たらアウト。勿論ノーバウンドで捕ってもアウト」
「ふむふむ」
まぁ、至ってシンプルだよね。
じゃ、軽く練習をしたら早速やってみますか。
とりあえず最初のチームはこうなった。
Aチーム・俺、ウル、マリン
Bチーム・金子、タイガ、大浦、一二三少年
Cチーム・ミズチ、レオン、隼人
投手を一チームずつに放り込んでおいて、後はグーパーで決めた。
まぁ、他の奴が投手をやるのは全然ありだ。
「怪我とかどうやったらするのか分からないけど、それだけには気を付けるようにー。じゃ、始めまーす」
まずはAチーム対Bチーム。
ピッチャーは俺と金子だ。
「ふはははは!! いくぜー!」
打者はタイガ。ズバッと三振を奪いたいところだったんだが。
ボール。ボール。ボール。ボール。
「はい。四球ー」
「へいへーい! ピッチャービビってるー!」
コントロールが全然出来ん。
普通の野球の100倍むずいぞ。
「パーン! あんたからピッチングを除いたら何が残るのよー!」
敵からも味方からもヤジを飛ばされる。
確かに俺からピッチングを取ったら何も残らん。
普通のボールより小さいキャップとか打てる気しないし。
「ピッチャービビってるーって、小学生とかよく言ってるけど、どストレートな煽り文句だな」
今更ながらに思った。
これ、高校野球で言われたらプッツンくるかも。
気を付けようね。
続いてバッターは大浦。
なんかプラスチックバットを構えてるだけなのに雰囲気が滅茶苦茶ありやがる。
こんなガチのやつだっけ? 動画サイトで見たみたいに、もっと和気藹々とやりたかったんだが。
「よいしょー!」
さっきまではオーバーハンドで投げてたけど、サイドスローに変える。
ってか、いつもとほぼ変わらないフォームで投げる。
「おおー!」
大浦は豪快な空振り。我ながらえげつないストレートを投げれた。
「豹馬っち! それやべぇっすよ! 誰も打てねぇっす!」
「俺もびっくりだよ」
ライズボールってやつだな。
低めのボール球から高めのストライクゾーンまで伸びていったぞ。
やっぱり普段通りのフォームで投げるのがいいのか。
「喰らえ! 魔球!」
スライダーを投げる。
長い腕から放たれたボールはすんごい曲がる。
これ、左打者は打てないだろ。本当に背中からコースに入ってくるぞ。
「豹馬っち! 日本一っす! 日本一のキャップピッチャーになれるっすよ!」
「いや、動画サイトには本当にえげつないキャップを投げる奴がゴロゴロいるぞ」
それを平気で打つ奴もマジですげぇ。
なんで野球やってないんだろ。普通にアベレージヒッターとかになれそうなんだけど。
やっぱり、普通の野球とは別物なのかしらね。
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