閑話 渚


 「なんだか今日はご機嫌ね?」


 「えぇ〜? そうですか〜?」


 「撮影中ずっと笑ってるもの。何かあったの?」


 「うふふ〜。私彼氏出来たんです〜」


 「あらまぁ」


 とある中高生向けの雑誌の撮影中。

 自分自身はいつも通りを心掛けていたつもりだったけど、どうやら編集者さんには私の幸せオーラがバレてしまってたみたいです。


 「ずっと好きだったのでとっても嬉しいんですよ〜」


 「渚ちゃんが言ってたお兄さんの友達かしら?」


 「そうなんですよ〜! この前やっと告白してくれて〜」


 私がパン君と出会ったのは小学5年生の頃。

 あの時はママが離婚したりして大変な時期だったのを覚えている。そんな時、兄さんがいつかやってみたいと言っていた野球を始める事になって、そのチームの中心人物だったのがパン君。


 どうやら兄さんを野球に誘った人であるらしく、パン君のお父さんがママに仕事を斡旋してくれたりかなり助けてもらいました。

 パン君には神奈ちゃんという私と同い年の妹がいて、当時は二人目の妹が出来たように可愛がってもらいました。


 私も最初は兄さんが増えたみたいで嬉しく、パン君の家に行くたびに神奈ちゃんと一緒に遊んでもらっていたのを良く覚えています。


 私がパン君に対して親愛から恋心に変わったのはいつからでしょうか。

 気付けば好きになってたんですよね。

 兄さんが野球を始めた影響で私も野球に詳しくなっていき、パン君がどれだけ凄いのかを徐々に理解していきました。

 楽しそうに相手打者を三振させていく姿。普段はお調子者なのに野球に対しては真摯な姿勢。

 常日頃からモテたいモテたいと言ってるのに、いざ女性を目の前にするとドギマギしてしまう可愛らしい性格。


 挙げるとキリがないですが、いつからかそんな姿に惹かれてしまっていたのだと思います。

 パン君もいつからか私の事を妹の様な扱いから、女性扱いをするようになって。

 少し悲しくはありましたが、それでも一人の女性として見てくれてるんだと思うと胸が熱くなったり。


 「見て下さい〜! この人なんですよ〜! カッコいいですよね〜?」


 「あらあら? いつもはどんな人って聞いても見せてくれなかったのに、どういう風の吹き回しかしら?」


 「もう私の彼氏ですからね〜! 誰にも取られる心配はありません〜。パン君はカッコいいのでライバルは増やしたくなかったんです〜」


 パン君は結構モテる。

 本人にその自覚はないみたいだけど、兄さん情報によると中学生の頃から何人もの人間に告白されていたみたいです。

 あれだけモテたい彼女欲しいと言っていたパン君が毎回断ってるのは不思議でしたね。

 私からするとラッキーでしたが。もしかしたらその時から私を意識してくれていたと思うのは自惚れすぎでしょうか。


 パン君は将来プロ野球選手になる。

 これは本人もその気だし、怪我さえなければ順当になれるだろうと思っている。

 その時に私はパン君の隣にいるのがふさわしい女性になれる為に。

 そう思って偶々スカウトされた読者モデルになってみた。このまま実績を積み上げれば将来は有名モデルになれるかもしれない。


 パン君はそんなのを気にしないだろうけど、これは私の女としてのプライドの問題だ。

 パン君が将来凄い選手になった時の為に。この人なら隣に居ても問題ないとファンの人に思ってもらう為に。今から努力を積み重ねないといけない。

 モデルの仕事を継続しつつ、将来パン君を支えられるように勉強もする。

 理想はパン君のご両親みたいな関係。今から沙雪さんにプロ野球選手の妻としての心得を教わっておくべきかもしれない。


 「あら? なんか見た事があるような?」


 「うふふ〜。今年の春に甲子園に出たんですよ〜!」


 「あー! そうだわ! 友達が野球好きで一緒に見てたから見覚えがあったんだわ。渚ちゃんは凄い人をゲットしたわねぇ」


 「はい〜! パン君にふさわしい女性になる為にモデルの仕事はこれまで以上に頑張りますよ〜!」


 モデルの仕事がふさわしいのかは分からないけれども。私は私に出来る事を。

 将来立派なお嫁さんになる為に。

 パン君見てて下さいね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 やはり女性視点は苦手でやんす。

 この話書くのに三時間くらいかかったぜ。

 普段なら一時間かからないのに。

 当分女性視点は書きたくねぇ。

 

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