第2章 夏の始まり

第17話 開会式


 7月の最初土曜日。

 明治神宮野球場で全国高等学校野球選手権西東京大会・東東京大会の開会式が行われて、すぐに開幕ゲームが始まる。


 龍宮高校は赤色の帽子に白地のユニフォームだ。

 胸元にデカデカと龍宮と書かれている。



 因みに1年生の新入生は11人いて、シニアのみんなと金子は背番号を貰っている。

 俺達のせいでベンチメンバーに入れなかった上級生もいるので、なんとか甲子園に行きたい。

 俺の背番号は15。1番好きな数字だ。

 ランディジョンソンが好きでその背番号を逆にしただけだけど。

 俺は生涯15番を貫きたいと思ってる。

 シニアの時も、エースナンバー辞退して15番付けてたし高校生活でもそのつもり。

 勿論プロに行けたとしても15番がいい。

 いつか15番と言ったら三波と言われるようになりたいな。



 それはさておき現在、俺達は滅茶苦茶目立っている。

 理由は髪の毛だ。

 ちらほらと髪を伸ばしているチームもいるが、やはりまだまだ坊主が多いし、龍宮高校のほとんどの生徒は髪の毛を染めている。

 俺は茶髪に赤のメッシュを入れてるし、隼人に至っては金髪である。

 日本一高野連に喧嘩を売ってるチームだと自負してます。

 周りからめっちゃ見られてるし、なんか非難めいた視線もある。


 「なに、あのチーム? 不良学校?」


 「龍宮?進学校じゃないの?」


 「うわぁ」


 「ああいうのはやめてほしいよな。高校野球の品位を下げる」


 ひそひそと言うのやめてくれませんかねぇ。

 聞こえてますよ?

 ただでさえ隼人は沸点低いんだから見えない所で聞こえない様に言ってほしい。

 見えない、聞こえないは、もはやいないのと一緒だからね。

 承認欲求の塊なのでエゴサはするんだが。


 「おーおー。酷い言われようだなぁ! ここまで露骨だと笑けてくる」


 「え!? どうした、隼人!? お前がキレないなんて…朝ご飯食べた? 体調でも悪いのか?」


 今年1番の驚き! こそこそされるのめっちゃ嫌いなくせに! 隼人がキレないだと!?


 「ふっ。俺も大人になったって事だなぁ」


 なんかやたらと意味深な顔で俺を見てくる。


 「え? 真面目になんかあった?」


 「彼女が出来てなぁ。変な事言われても我慢するようにってよぉ。可愛いだろ?」


 スマホを操作して写真を見せてくる。

 は? 可愛い。


 「はい、絶交」




 隼人と友情関係を解消した俺はそそくさと入場位置に向かう。

 爆発してしまえ。


 そして入場行進が行われて、くそ暑い天気の中、お偉いさんの有り難いご高説を拝聴する。


 「暑い。無理。倒れるぞ。ジッとしてる方が辛い。人口密度が凄い。これ、真面目に聞いてる人いるの?」


 ぐだぐだと文句を言ってるうちにようやく話が終わる。


 「開幕ゲーム見て行くか? ビデオは、保護者会の人達が撮ってくれるから、帰って軽くミーティングして解散でもいいぞ?明日試合だしな」


 監督が提案してくれるが帰るに決まってる。

 野球でかいた汗は気にならないのに、ジッとしてるだけで出てくる汗が気持ち悪いのはなんでだろう。



 少しでも長い夏になるように。

 心の中でそう思いながら、学校に帰るのだった。

 

 

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