第103話 準優勝


 まけほー。

 いやぁ、負けた負けた。

 5ー4と一点差だけどさ。


 「金子が途中でへばったのがなぁ」


 「仕方ないでしょ。球数もかなり投げてたし」


 金子は七回まで投げて三失点。

 桐生相手に良く頑張ったけど、球数が150球を超えた辺りで自分からギブアップ宣言。

 これ以上投げたら壊れそうとの事だったので、大浦にスイッチ。

 俺も一応準備してたし、投げても良かったんだけど、外野から投手へってパターンを試しておきたかったから出番はなく。

 そこから大浦は九回まで投げて二失点。


 打線も八回から出てきた相手エースを後一歩のところで仕留めきれずに敗戦となった。

 まぁ、大浦の試すパターンは練習試合でやれよって言われたらそれまでなんだが。

 チームのみんなも神宮だしって思っちゃってたのがね。

 桐生もエースを八回までは投げさせてなかった訳だし。


 「ってか、150球も投げたなら普通は完投だよ? 俺は頑張った方だと思うんだ」


 「慎重になりすぎて無駄球が多いんだよ。カーブの制球も微妙だったし」


 「桐生って事で意識しすぎたなぁ」


 「おんなじ高校生なのに何を意識するんだよ」


 「ブランド的な?」


 「お前が普段投げてるレオンとか、大浦の方がよっぽど怖いぞ」


 「た、確かに。なんでそれを試合中に言ってくれないのさ!」


 空回ってて面白いなぁと思ってたので。

 良い経験になるとも思ったし。


 「まぁ、打線もエース相手じゃないのに、四点しか取れなかったのは問題だよね。レオン以外は肩に力入ってるように見えたし」


 そんなに桐生って気にする事かね。

 俺から言わせて貰うと、桐生より龍宮打線の方が倍ぐらい怖いんだが。

 高校生にメンタルコントロールはまだ難しいか。

 東京を制したのに、まだまだ自信が足りないと見える。


 「ま、言ってる間に対外試合禁止期間になるしな。ギリギリまで練習試合入れて、冬の間に各々レベルアップしましょうか」


 「俺はとにかく体力だね。150球投げても連投出来るくらいに」


 「馬鹿かお前は」


 滅多な事ではそんな事しないんだよ。

 うちには、キャプテンもいるんだし。

 いくら回復の早い高校生でも、150球投げたら二日ぐらいは休むもんだ。


 「お前は回復力を上げるべきだな」


 クエン酸を崇めろ。

 そしてもっといっぱい食べて、内臓系を強化するべきだな。

 投げ終わった後の落ちた体重回復をしっかりしないと。


 「俺も人の事とやかく言ってる場合じゃないんだよな。足腰とインナーマッスルを重点的に鍛えないと。もう怪我はしたくねぇ」


 「豹馬って野球に関しては真摯だよね」


 「野球で食べていくって決めたからな。怪我したら無職だぞ? 人一倍真剣になるってもんよ」


 前世は怪我で野球を諦めたってのもあるしな。

 しっかりケアしてるつもりだが、夏の試合みたいに不慮の事故もある。

 映像を見返してみると俺の避け方が悪かったっぽいし。

 そういう所も学んでいかないとな。


 「今日の桐生を見た感じ、春には勝てるさ」


 相手も流した試合みたいだったけど。

 一応リベンジを誓いつつ、龍宮高校の神宮大会は準優勝という結果で終わった。

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