第151話 VS桐生3


 「何、あいつ? カーブ待ってたの? 捻くれすぎだろうよ」


 「待ってたのかな? 打てそうな球が来たから反応したみたいな感じだったけど」


 ブルペンで俺と金子は口をぽかーんと開けて呆然としている。

 相手の投手からしたらたまったもんじゃないだろう。意表をつく為に投げた球を打たれたんだから。

 悪いボールじゃなかったし、ストライクかボール、ギリギリだったと思う。

 それを打ったレオンがおかしいんだ。しかも、緩いボールをスタンドまで持っていくパワー。


 「もうあいつ早くプロ行けよ」


 「高校球児が可哀想だ」


 そろそろ常識の範疇に収まらなくなってきたのでは? 清○が甲子園に出て来た時の時代はこんな感じだったかね。投手にも桑○がいたし。


 「およ? 俺とレオンは再来とか言われないかな?」


 AMコンビとかさ。なんかコンビニみたい。ださいから無しでお願いします。


 続くバッターは4番の大浦。落ち着かない間にエースを攻めて立てて追加点といきたいところ。

 今大会ホームラン三本、打率4割越えと一気にブレイクしたけど、まだまだやれるはず。

 あのレオンに打点では勝ってるぐらいだしね。まぁ、レオンは歩かされるのがあるからなんだけど。


 しかし、相手エースは冷静だった。大浦は4球目のフォークを打ったものの、セカンドゴロ。

 一点を先制して一回裏の攻撃は終了。


 「よしよし。先制点は大きいな。これでキャプテンも少しは余裕を持って投げられるはず」


 「この回も桐生は揺さぶってくるのかなぁ」


 チラッと桐生ベンチを見てみるけど、慌ててる様子は一切ない。流石の覇者といった感じか。

 まだ一回が終わっただけだしね。まだまだ攻撃は残っている。


 二回表。桐生は4番から。

 今年の桐生打線はホームランバッターはいないように思う。全員が広角に打ち分けられるアベレージヒッターが多い感じかな。

 勿論、打っていないという訳ではない。

 この4番だって地方大会で二本は打っている。甲子園では打ってないけど。


 初球。キャプテンはアウトコースへストレート。

 バッターは反応したものの、手は出さず。

 判定はボール。


 そして2球目。先程のストレートと同じ様なコース。今回はしっかりゾーンに入っている。

 バッターは手を出すが、手前でストンと落ちた。

 スプリットで空振りを取ってワンストライク。


 3球目はインコースへのボールからストライクになるスライダー。フロントドアにバッターは手が出ずにストライク。


 「んはー! 良い球。強いて言えば今のを決め球にしたかったところ」


 決め球をどうするのかなと思っていたら、そこから2球連続でボール。

 フルカウントになってしまった。


 「むむ。勿体無いな」


 「どれも良い球だと思うんだけど、なかなか手を出してくれないね」


 そして6球目。真ん中低めから落ちるスプリットを選択。

 フルカウントからボール球は予想外だったのか、4番のバットは止まらず空振り三振。


 「勇気あるなぁ。もし見送られたらノーアウトのランナーなのに」


 「だからこそタイガはスプリットを選択したんだろうね」


 その後5番6番も打ち取り、この回も三者凡退。

 球数は20球と嵩んでしまってるのが、ちょっと気になるところだな。

 地味にプレッシャーをかけてきやがるぜ。

 一瞬たりとも気の抜けない戦いになりそうだ。

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