第10話 身体測定
入学式の翌日の土曜日。
今日から待ちに待った練習である。
俺は楽しみすぎて、いつもより1時間も早く起きる。
思わぬ出来た時間を有効活用できるか。
それが、出来る男への第一歩である。
そして早速、今やってるソシャゲのデイリーミッションをこなしていく。
モンスターを引っ張ってストライクするゲームだ。
「ガッデム!!」
今世のガチャ運はクソである。
父さんと母さんと一緒に車で学校に向かう。
ついでとばかりにシニア連中を拾い、朝のガチャについて話す。
前世でもブームになったので、今世でもみんなを誘い一緒にやってるのだ。
全員無課金である。
「ガチャはクソ。絶対物欲センサーが働いてやがる」
「俺、今日星5でたな。被りだったけど」
そう言って、画面を見せてくるタイガ。
それは俺が出た当初からずっと欲しい堕天の王である。
こいつしばらく猛威を奮うんだ。
「ガッッッデム!!」
はぁー。イケメンで野球上手くて? ガチャ運良くて彼女持ち? 世の中間違ってるぜ。
そんな事を話しながら、学校に到着し部室に向かう。
「ちわす!」
挨拶しながら、部室に入るともうほとんどの人がいた。
「あ、豹馬! 今日はなんか聞いてるか? お前の父も来るし、監督も新しく今日から来るだろ? 練習メニューとかいつも通りでいいのかなって」
キャプテンのゴリ條さんが話し掛けてくるが、俺は何するか聞いてない。
予想はつくが。
「何するかは、聞いてないですけど多分身体測定だと思いますよ。そこから個々でメニューを作ると思います」
「なるほど。じゃあとりあえず軽く体を動かして待ってた方がいいか」
キャプテンと話しながらグラウンドに向かう。
A面B面の二つと室内練習場もある整った設備だ。
各々、体を暖めて待っていると父さん母さん、それにちょっと太った老人に差し掛かった人がやって来た。
「はいはーい! 注目! 今日から不定期でコーチする事になった、三波勝弥です。こっちは妻の沙雪。俺は主にバッターの指導になると思います。妻は俺が現役時代、トレーナーをやってくれてたので主に、各種データを取り個人に合った練習メニューを考えてくれる予定です。これからよろしくお願いします」
「よろしくお願いね」
父さんと母さんが挨拶すると、周りからざわめきが起きる。
俺達シニア組は当たり前の様に会っていたが、やはり父さんはレジェンドなのである。
すげぇ、本物だぜみたいな声も聞こえてきたりする。
なんだか誇らしい気持ちだ。
「俺の事について質問があれば、練習後にまとめて答えるのでそのつもりで。そして、こちらの方が監督の畑重蔵さんです。今年からこの高校に来てもらいました。監督として甲子園には1回行った事があり、俺の高校時代の監督でもあります」
へー。知らなかった。
新しく監督が来るとは聞いていたけど、まさか父さんの高校の監督とは。
「えー、監督の畑です。勝弥がいるので、あまり指導する事はないかもしれんが、守備だけはしっかり叩き込んでやりたいと思ってるのでよろしく頼む」
周りから拍手が飛び交う中、今日の予定について話す。
やはり上級生含め、全員身体測定してデータを取るみたいだ。
「じゃあ準備出来た人から順々にやっていこうか」
そう言って身体測定が始まった。
身長体重を測り、体脂肪率も計測する。
そして、お馴染みの1500m走や50m走、腹筋背筋等基本的事から遠投や、ベースランニングと野球に関連するデータ等全て計測していき、終わる頃にはお昼になっていた。
「えぇ。左手の握力でしか1番になれなかったんだが」
持久走系はレオンが1番で足の速さではウル。
筋肉系はキャプテンにほとんど持っていかれた。
「いや、むしろゴリラに勝てたとポジティブに考えよう」
因みに、俺の左の握力は110キロである。
「全員終わったなー? よし。じゃあ、昼休憩だ」
途中で間食を挟んだりしたが、お昼タイムである。
「いやー、遠投で1番取れて良かったよ。というより、それしか望みがなかった」
タイガは遠投でトップだったみたいだ。
「ちっ、俺は何にも取れんかった。嫌味か、タイガ」
「なんで隼人はそんなに喧嘩腰なのさ! いいじゃん!隼人は平均的にどれも高いんだから!」
「うるせぇ! 平均点でもレオンに負けてんだよ!」
「レオンは仕方ないよ、レオンは…」
「む? なんかすまんな、隼人、この通りだ」
「てめぇ! 煽ってやがんのか!」
なんか向こうで、ワイワイ言い争いしてるがいつもの事なので気にしない。
「むむむ。ハヤ×レオ? いや、レオ×ハヤの方が捗るか。パンどう思う?」
「ん? なんの話?」
こっちはこっちで腐ってやがる。
なんでもかんでも結びつけるでない!
「ウルは気にしなくていいんだ。お前はそのまま馬鹿でいてくれ」
「おぉ? なんかよく分からないけどわかったよ。そういえば、先輩に1人僕とおんなじぐらい足の速い人がいたね」
「有望株じゃん。ウルと一緒ぐらいって相当だぜ?」
そんな事を話ながら、昼食を終えて再びグラウンドに戻った。
「えーとデータは一通り取れたので、今から解析していきます。ピッチャーはこの後別個で取らせてもらうのでそのつもりで。午後からは、ピッチャー以外とりあえず全員で出来る事と家や寮で出来る簡単なトレーニングの紹介と指導になります」
おっと、俺はまだ測定が残ってたのか。
まぁ、同期のピッチングも見たかったので丁度いい。
ピッチャーは、3年生に1人と2年の三井先輩、そして1年の俺と同期の金子である。
「じゃあ、ピッチャー組とキャッチャーは沙雪に着いて行って室内練習場に。それ以外は俺について来てくれ」
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