第221話 決勝戦


 決勝の相手は三高。

 こことやるのはもう飽きたよ。

 何回霊山の顔を見ないといけないんだ。


 龍宮のスタメンは相変わらず新戦力と控え。

 相手はガチガチのベストメンバーなんだけどね。

 しっかり霊山は先発だし。


 序盤は両校の先発が奮闘して0行進、

 というより、霊山がやばい。

 あいつ140キロをとうとう出してきた。

 アンダースローだぞ? 漫画かよ。

 あいつも順調にバケモノ化してるじゃないか。


 試合が動いたのは五回表。

 四球とヒットでノーアウト一.二塁のピンチを背負ったミズチが一番の柳生にホームランを打たれて、三点を先制される。

 後続にもヒットを打たれるも、その回はなんとか踏ん張る。


 しかし、六回にもタイムリーで一点を失う。

 そこで龍宮はミズチを諦めて俺にスイッチ。

 しっかり火消しをした。ハマスタで投げれて嬉しいです。


 だが、とにかく霊山が良すぎる。

 140キロ超えの文字通り浮き上がるストレートと気持ち悪い変化をするシンカー、その他変化球での緩急を巧みに使って、龍宮打線を寄せ付けない。

 俺もストレート三つでしっかり三振した。


 てか、今日の霊山の出来を見る限り、スタメンの打線でも打てるか怪しい。

 それぐらいとにかく良いピッチングなんだ。


 「決勝まで来たし、負けてもええかと思っててんけど、あの伊集院の球筋は見といた方がええやろ」


 って事でスタメンを総入れ替え。

 七回からがっつりベストメンバーになったんだけど。


 結局打てたのは、隼人だけだった。

 レオン四球、大浦がアウトになったものの、ランナーを進めて得点圏にランナーを置いた隼人がホームラン。

 反撃はここまでで、俺もミズチと交代してからはヒット一本の無失点に抑えたものの敗戦。


 龍宮高校は春季関東大会を準優勝という結果で終えた。



 「岸田ー! 完璧なピッチングやったのに、何してくれてんのや!!」


 「うるせぇ」


 試合後。

 ハマスタの外で喋ってると霊山が突進してきた。


 「レオンから逃げた癖に完璧なピッチングとは片腹痛しですよ」


 「に、逃げた訳ちゃうで。ちょっとクサいところを攻めすぎた結果や!」


 霊山に負けてムカついたので、レオンに四球を出した事を言ってやる。

 目がザバンザバン泳いでますよ。それはもう綺麗なバタフライが見える。


 「豹馬と投げ合うの楽しみにしててんけどなぁ」


 「じゃあ三高が勝つ事は無かっただろうな。なにせ俺が投げたら三高は点が取れないので」


 「負け惜しみやんか」


 そうですけど? どうせ決勝まできたなら勝ちたかったですし?

 負けたのは龍宮だから、ここで何を言っても負け惜しみにしかなりませんけど?

 それはそれとして霊山に負けたのはムカつくので。


 「ミズチも良く粘ってたんだけどなぁ。あのホームランがマジで余計だった。柳生君って良い打者だよなぁ」


 白馬君ほどのバットコントロールではないものの、その分パワーがあるんだよね。

 一番じゃなくて三番辺りを打った方が良いような打者だ。


 「あいつも結構スカウト見に来てるみたいやで」


 「だろうな。霊山は?」


 「アンダースローなんがなぁ。プロでやっていけるかを疑問視されとるみたいや。一応挨拶的なんはあるけど。まぁ、僕は大学経由も考えとるし、そこまで焦っとらん。豹馬は来とるんか?」


 「一応12球団全部来たな」


 アメリカからもチラホラと来てますね。

 当たり障りない話しかしてないけど。ってか出来ないんだけど。

 勿論レオンにも来てる。けど、今龍宮で一番ホットなのはキャプテンだ。

 何せ三年生だからね。


 

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