第85話 ミーティング


 「よし、ほな始めるでー」


 放課後の部室にて。

 練習は疲れが残らない程度に軽くやってから、次の対戦相手の関東一高のビデオを見る。


 「特別こいつは要注意って奴はおらんな。強いて言えば全員高いレベルでまとまってる感じか。松美林の上位互換や。白馬はおらんけど」


 機動力で引っ掻き回してくるチームだよね。

 塁に出したらめんどくさいんだろうなー。


 「先発は豹馬。1人で投げ切ってもらう予定やけど、金子も試合展開によっては出番あるかもしれへんからな。準備はしといてくれ」


 秀徳相手に完投した金子は、試合が終わった翌日はヘロヘロだったけど、今はやる気に満ち溢れてる。

 前回の完投はイライジャには打たれたけど自信になっただろうな。


 「打線に関しては特に心配はしてへん。相手のエースも三井と比べたら全然や。お前らなら打ち崩せる」


 龍宮の打線は都内屈指だもんね。

 今の俺でも無失点はちょっときついかもしれん。

 レオン、大浦、隼人のクリーンナップが残酷すぎるんだよ。

 

 「って事は次の試合は俺の出来次第って感じ? プレッシャー半端ないな」


 まあ、緊張する程でもないが。

 未だ体が本調子ではないとはいえ、負ける気はしないな。

 予期せぬアクシデントには注意だけど。


 「パンがプレッシャー感じる事とかないでしょ。世界大会の決勝でも飄々としてたのに」


 「確かに。お前緊張した事あるのか?」


 あるわ、馬鹿たれ。

 美人と話する時はいつもガチガチじゃい。

 野球関連ではないかなー。

 死後に、文字通り時間を忘れる程練習したからな。

 練習でやってる事を、試合でも同じようにやるだけ。

 身の丈に合わん事をしようとしなければいいのさ。


 「じゃあ、今日はこのビデオ見て解散な。自主練してもええけど、疲れは残すなよ」


 よーし! ブルペン行くぜー!

 最近ちょっと試してる球種があるんだよね。


 「タイガー! ブルペン付き合えー!」


 「えー、俺、最近調子悪いからバッティングの練習したいんだけど」


 むむむ。

 そう言われると無理にはお願い出来ないな。

 秀徳戦では四球一つだったし、本人も思う所があるんだろう。


 「父さんに相談したら? 最近こっち来てないから、不調の原因が分かるかもよ?」


 父さんは、最近経営の方で忙しい。

 新しく手を出そうとしてる事があるらしい。


 「そうしようかな。勝弥さんのアドバイスは的確だし、何か現状を打破出来る事があればいいんだけど」


 うむ。

 俺にはバッティングの事は分からんからな。


 「じゃあブルペン行こうか。今日もアレ投げるの?」


 「投げる! 手首に負担がかかるから数は投げれないけどな! 試合で投げれる程度には仕上げたい」


 「現状の変化球だけでも、充分プロレベルだと思うけどね」


 馬鹿野郎。

 プロレベルで満足出来る訳ないだろ。

 俺は世界最高のピッチャーになるんだ。

 背番号15は三波豹馬。

 これ、万国共通にしたいね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る