第139話 VS江陵4
六回裏。
先頭のウルは10球粘って四球。
最後はストレートがすっぽ抜けてた。
「フォークを多投してたからな。握力も結構限界きてるだろ」
それに緊迫した状態でプレッシャーがあるのは、金子だけじゃない。
相手エースもうちの打線相手にここまでギリギリの戦いを演じているんだ。
実際ここまで良く抑えてると思う。
俺でも今の龍宮高校相手に投げるとしたら、かなり神経を擦り減らす事だろう。
「送るのか走らせるのか。迷う所なんだけど」
監督は迷いを見せずに走らせる選択。
俺は送る派だったんだけどな。
「ここまで見た感じやと、雨宮の足なら間違いなく盗める。送るなら二塁に行ってからやな。レオンを歩かされるかもしれんし」
そうだけども。今日のレオンの出来なら勝負してくるんじゃないかなぁ。
相手バッテリーや監督がさっきのすっぽ抜けをどう判断してるかによるけど。
そろそろフォークを投げるのにもビビり始めてもおかしくない。
相手ピッチャーは牽制球を3球投げてきたが、ウルはリード小さめで走る素振りをみせない。
タイガも初めからバントの構えをしている。
そして初球。
ウルは完璧にモーションを盗んでスタート。
アウトコースへのボール球で外し気味だったが、キャッチャーは投げる事すら出来なかった。
「やべぇな。チーターかよ」
「狼や」
いや、そうなんだけど。
名前にも入ってるからウルって呼んでるんだし。
それにしても速い。あいつ、足だけなら既に今からプロ行けるんじゃないかね。守備もいけそうか。
あんなの塁に出したら自動的にツーベースじゃん。
そして2球目をタイガは確実に送ってワンアウト三塁。お膳立ては整った。
レオンを歩かせても、大浦と隼人が後ろにいるからな。ここはなんとしてでも点が欲しい。
「三塁にランナーがいるからな。安易にフォークを投げたらワイルドピッチもありえるぞ」
この回からコントロールも定まってないし。
ピッチャー交代もあるかなと思ったけど、ここはエースで勝負するらしい。
初球。
相手バッテリーが選択したのはフォークだった。
真ん中低めから落ちていく、これ以上ないボール。
レオンも流石に初球フォークは予想外だったのか、完璧に体勢は崩されていた。
しかし、レオンは片手一本でワンバウンドしそうなボールを掬い上げた。
打球はセカンドの頭をギリギリ越えて、ライト前へのタイムリーヒット。
待望の先制点である。
「いえーす! よく拾ったぞー!!」
マジで。よくあんな体勢から片手一本であそこまで持っていけたよ。
レオンにしては泥臭いヒットだが、ヒットはヒットだ。あの打ち方的にストレート一本狙いだったんだろうけど、レオンの判定勝ちだな。
そしてここでピッチャー交代。
江陵はエースを諦めて2番手を出してきた。
「うーん。でもあの江陵のエースは要注意だな。夏も当たる可能性があるし」
夏までまだ四ヶ月近くある。
更にレベルアップしてきたら驚異になるだろう。
その前に東京予選を勝ち上がらないとだけど。
4番の大浦は代わりっぱなの初球を軽打。
センター前へのクリーンヒットで隼人を迎える。
「さっきはチャンスで凡退したからな。今度こそ頼むぞー」
そう思ってたんだが、相手ピッチャーは制球が定まらず四球。
ワンアウト満塁で清水先輩の打席。
「ゲッツーだけは勘弁しておくれー」
「なんでそうやってフラグっぽい事言うの?」
カチャカチャと防具をつけてたタイガに怒られてしまった。
さっきレオンの時にフラグには気をつけようと思ったところだったのに。
つい口からひょっこりと言葉が出ていってしまったぜ。
しかし、ここは先輩の意地なのか。
レフトのフェンス手前まで運び、犠牲フライ。
値千金の追加点である。
そして7番の金子だった所で代打が出されたがセカンドゴロに倒れて六回裏が終わった。
「三井いけるな?」
「はい!」
そしてここで龍宮高校もピッチャー交代。
金子は六回無失点で役割を果たしお役御免である。
「豹馬も一応準備だけしといてくれよ」
「合点承知」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
近況ノートを更新しました。
サポーター様向けの勝弥さんの活躍の方も更新したので良ければご覧くだせぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます