第147話 決勝の相手
「『小さな巨人』ね。大浦も一気に全国区か」
「今までの活躍からしたら遅いくらいだよ」
翌日の新聞では大浦のホームランが大々的に載っていた。タイガの言う通り、注目されるのが遅いよな。そんなに身長が重要かね。
体が小さいのは怪我がしにくい利点もあるんだぞ。でかい俺が言うのもなんだけど。
「いやー自分がテレビに出てたり、新聞に載るのはなんか慣れないっすね」
「これから活躍したらもっと載るだろうよ」
大浦は『小さな巨人』がお気に召した様子。
あんまり小さいって言われる事を気にしてないんだよな。普通はコンプレックスになったりしそうなもんだけど。
そのまま日向翔○君ばりに羽ばたいてくれ。
「で、案の定俺の被弾も取り上げられてる訳だが」
「そりゃ、完全王子からの一発だからね。取り上げたくもなるでしょ」
昨日、エゴサした感じそんなに話題になって無かったから一安心してたのに。
新聞に燃料を投下されちゃったよ。
「いやー打たれて項垂れてるのも画になるね! この写真を撮った人はセンス抜群だ」
「うるせぇ」
俺がマウンドでがっくししてるのが、綺麗に写真で載っている。
確かにこれ以上ない写真だよな。後で貰えたりしないかな? 打たれた写真とはいえ、中々の映え具合。
因みに昨日の疑惑の判定の数々。秋季東京大会の映像も引っ張ってきて、ちょっと問題になっている。
俺が試合終わりのインタビューでちょびっと毒を吐いたからだろう。
言い訳っぽくなるから黙っとこうと思ったんだけど。自制出来なかったよね。今日はゾーンが狭く感じたから甘くなったのは否めないとかなんとか。
今思い出したらちょっと情けなく思ってきた。
そんなの関係なく抑えられる圧倒的で支配力のある投手にならなければ。
「はいよー。ほなミーティングするでー」
その後もわいわいとウルと話してたんだけど、大部屋に監督がやって来た。
次戦の決勝の相手が決まったからね。
「次は決勝やなー。初出場でここまで来れるとはお前ら幸せもんやで」
センバツとはいえ決勝だからな。
初出場で優勝とか記録あるんだろうか? 是非目指してみたいもんだね。
「で、相手は桐生。一応、神宮のリベンジって事になるな」
「ほんと桐生強いな」
最近の高校野球で名前を聞かない事はない、大阪の超名門。甲子園春夏連覇もした事ある強豪校だ。
「夏は決勝で負けとったけど、今年は強いみたいやなー。去年より選手層厚いでー」
「全国から4番とエースを集めてるみたいなもんだよな」
桐生はスカウト力がずば抜けてやがる。
桐生っていうブランド力もあるだろうけど、本当に欲しい選手には監督が直々に足を運んだりするからな。
その誠意に絆されてしまう人が多いんだろう。
「お前ら一年の豹馬とおんなじチームはスカウト来たんちゃうんけ?」
「監督が直々に来たのはパンとレオンだけですね。俺達もスカウトの人から話は来ましたけど」
桐生にはあんまり行く気が無かったもんで。
あんな山奥で野球ばっかりは流石に勘弁。
いくら野球が好きとはいえ、限度があると思うんですよ。アオハルも出来やしねぇ。
現状で出来てるかはさておき。でもでも、桐生に行ってたら渚ちゃんとデートとか出来なかった訳で。選択は間違ってなかったと思います。
「プロから注目されとる選手もちらほらおるからなー。毎年当たり前の様にプロに行く選手が輩出されとる。言ったら悪いけど、これまでの高校とはレベルが違うで」
「対戦が楽しみですねぇ」
「先発は三井やけどな」
くっ! やはりか。昨日の試合でそれなりに投げたもんな。決勝での先発は無理だったか。
「正直、試合展開が読めん。打線がいつも通り機能してくれたら話は早いけどな。流石にそこまで甘くはないやろ。何かしらの対策もあるはずや。豹馬は初回から準備しとけよ」
「合点承知の助平丸」
キャプテンをどこまで引っ張るかだよな。
絶好調で完投したりするのがベストだろうけど。
そうなると俺の活躍の機会が…。
でもでもキャプテンはドラ一を目指してるし、絶好のアピール場面。ここは素直に応援するべきなんだろうな。
俺の承認欲求さんは少し抑えて頂かないと。
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