第149話 VS桐生1


 「やべぇ。なんか急にコーヒー飲みたくなってきた」


 「意味の分からない事言わないでよ」


 間もなくプレイボール。

 一回表は桐生の攻撃からだ。

 そんな時に俺は何故かコーヒーを飲みたくなってしまった。


 「カフェオレでも良いから飲みたいな」


 「ベンチに置いてある訳ないでしょ」


 まぁ、いいか。なんで飲みたくなったのかも分からんし? お水を飲ませて頂きますね。


 サイレンが鳴りプレイボール。

 観客満員で歓声で地が揺れる程だ。


 「桐生の応援は気合い入ってるなぁ。俺も応援歌変えたら打てるようにならないかね」


 今はお任せなんだけど。もしかしたら紅とかに変えたら打てるかも。今度言っておこう。


 キャプテンは終始落ち着いた雰囲気だったけど、いざマウンドに立ってみるとどうなるか。

 意外とムキになったり子供っぽいところがありますからな。俺と一緒で。


 そして、先頭バッターへの初球。

 セーフティバントの構えだけ。判定はボール。

 2球目も3球目も構えだけを見せてきた。

 カウントはツーボールワンストライク。


 「初回の先頭から揺さぶってくるのか。今日は余程徹底して何かをしてきそうだな」


 「キャプテンの体力を削るのが目的とか?」


 うーん。まぁ、可能性はあるよね。キャプテンは体力面に若干の不安を抱えてるし。怪我は完璧に治ったけど、冬の練習はリハビリや体を元に戻す事に注力してたからね。

 それでも若干ってレベルだし、パワーアップはしてるんだ。


 「それにうちには俺とお前が居るんだぞ? 投手戦なら龍宮が有利だと思うんだけどな」


 「少しでも疲れさせて、僅かな失投を狙うとかかな?」


 そう考えるのが自然ですかね。いやはや、超強豪校が初回からこんなに対策をしてくるなんて、光栄でもあり怖くもあるよね。


 「ふーむ。早速ブルペンに行っとくか。今日は早めに継投もありえるかもしれん」


 「俺はまだ良いよね? 今日はよっぽどの事がない限り出番は無いと思ってるんだけど」


 いや、あるかもだぞ。一応プランでは俺とキャプテンとで逃げ切る予定だけど、何があるか分からん。夏の大会だって連続で怪我とかあったんだし。


 「軽くキャッチボールでもしとけよ。万が一の為に」


 「豹馬がそう言うとフラグになるんだよ?」


 うるさいやい。そんな事言われたら本当に喋れなくなっちゃうだろ。今更俺が無口キャラになったってウケないんだよ。


 金子と喋りながらブルペンに向かっていると、一回表が終わった。

 ランナーも出なく三者凡退で終わったけど、球数は25球も投げさせられている。しかも1.2番はバントの構えだけで揺さぶって、毎回投げる度にマウンドから軽く走ってるから、球数以上に疲労があるだろう。


 「ふーむ。恐るべし大阪桐生高校。構えは気にするなって言われても気になるのが投手だからな」


 「豹馬は本当に気にしないよね」


 いやまぁ。するならすればって感じだし。

 俺の投げ方や球質がバントしにくいってのもあるし、基本的に俺はゾーンに投げて勝負するタイプだから。

 フリだけでカウント増やしてくれてありがとうございますって思ってますね、はい。


 「フィールディングにも体力にも自信があるからね」


 特にフィールディングは死後の世界でも、生まれ変わっても滅茶苦茶練習してるから。

 やっぱり練習は自信をつけてくれますな。

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