第232話 紅白戦9
「ふはははは! 魔王レオンは勇者豹馬の手によって敗れたのだ!!」
「最後の何? ツーシーム?」
俺はレオンをダブルプレーに抑えてウキウキでベンチにもどる。
いやぁ。我ながらよく制御出来たね。速さだけが全てじゃないってことよ。レオンはギリギリまで何を投げられたか分からなかったんじゃないかな。
「です。フォームがまだちょっと甘めなんでね。そこは要修正ですけど。初見なら騙せたみたいで」
「なるほどねぇ。あのレオンがダブルプレーだなんて。お宝映像だよね」
ですなぁ。まさか俺もこんな結果になるとは。
俺の予想では空振り三振だったんだ。でも、レオンのバットコントロールが仇になった。なんとか当ててしまったんだ。それが最悪の結果になってしまった。
ちょっと速度を落としたツーシームも中々使えるな。スクリューみたいな感じで使えるかも。まだフォームが不安定だから、しっかり固めてモノにしたいところだな。
「さてさて。1-0のままで、もう八回裏ですよ。そろそろ逆転したいですねぇ」
因みにこの紅白戦に延長戦はない。
万が一同点でも九回でしっかり終わる。
多分もうレオンに回る事は無いだろう。俺が滅多打ちとかされなければね。
ふははっ。今日はレオンは悔しい日になった事だろう。1本ツーベースを打ってライトにあわやホームランの大飛球を放ったとはいえ、それだけだ。
しかも三振をして最後はゲッツー。今後の練習で奮起してくれる事に期待します。
逆転してくれたら俺が死ぬ気で抑えるのに。
だからなんとか2点取ってくれないかなと思ってたんだけど、ミズチも踏ん張る。
ヒットを一本打たれたものの、0に抑えて八回裏が終了。いよいよ九回である。
先頭は大浦から。
魔王を退治したからといってまだ安心出来ない。
大浦も充分魔王になれる器だ。しかし、勇者はみんなの希望。誰にも負ける訳にはいかないのだ。
「くらえ! エクスカリバー!」
高速チェンジアップで空振り三振を狙う。
が、大浦の腰の粘りが異常だった。
ギリギリまで溜め込んで一気に解放。溜めて溜めて解放。解放エクササイズである。
あいつ、マジでたまにやってるからな。絶対効果なんてないのに。
そして痛烈な打球は左中間へ。
レフトがなんとか追いつき単打にしてくれたものの、もう少しズレてたらツーベースかスリーベースだった。これはマジで助かる。なんたって次は隼人だから。得点圏にいるかいないかは死活問題だ。
「でもランナー無しでキャプテンからホームラン打ってるもんなぁ。果たしてランナー一塁はどうなのか」
ってか、モチベーションの問題だと思うんだよね。チャンスに強いとかそういうのって。
隼人の心の変化があれば、ランナー無しでも打てるって事だろう。何故最近打てる様になったかは分からないが。今度聞いてみようかな。
ペシペシと牽制をいれつつ初球。
インコースへのストレート。クロスファイヤーである。隼人はこれに反応して打つもドン詰まり。
ボテボテのセカンドゴロだが、結果的には進塁打になった。一応ダブルプレーを狙ってたのだが、そう簡単にはいかないらしい。
そしてワンアウト二塁になって6番の清水先輩。
普通にピンチだが、ここと次の一二三少年もしっかり抑えて九回裏に望みを繋げたい。
そして清水先輩はライト定位置へのフライ。
しかし、大浦は抜け目なくタッチアップ。
ツーアウト三塁になった。
ここでプリンスがタイムを取ってマウンドにやって来る。
「落ちるボールのサイン出しても大丈夫ですか?」
「? 別に良いけど?」
逆に何がダメなのか教えて欲しいんだが。
あ、ランナー三塁だからか。もしかして俺がプリンスの壁性能を信頼してないとでも思ってる?
そりゃ、タイガよりは未熟だろうけど、投げるのにはなんの支障もないくらい良くやってくれてる。
大体俺の落ちる球なんてナックルカーブぐらいだし。縦スラはドッキリぐらいでしか使えないしね。
チェンジアップとかツーシームも、フォークとかスプリットみたいな変化する訳じゃないしさ。
って事でプリンスを戻らせて、問題の一二三少年との対戦。
ナックルカーブ3球で追い込む。まさか良いよって言って3球続けさせるとは。極端な子ね。
そして最後はアウトコースへ渾身のストレート。
指にもしっかり掛かって文句無し。
投げた瞬間にそう思ったんだけど。
一二三少年はジャストミート。
打球は投げ終わりの俺を襲った。
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