閑話 部室にて


 「うそ!?」


 とある部活終わりの部室にて。

 さっさと帰る部員もいれば、部室でダラダラと現代人らしくスマホをポチポチしたり、アプリで遊んだりしてる部員もいる。


 俺はまちまちだ。

 さっさと帰る時もあれば、ダラダラしてる時もある。今日はダラダラDAYだ。

 他にもタイガにマリン、剛元が残って一緒にいつものゲームをしている。


 で、今は俺が欲しいキャラの排出確率が上がってるって事で、意を決してガチャを回した訳だ。

 正直期待はしてなかった。今世のガチャ運は最悪なので。どうせ出ないんだろうと思ってたんだが。


 「で、で、で、出ちゃった!」


 「へー。珍しい事もあるのね」


 「ね。パンが欲しいキャラを引けるなんて」


 「三波先輩のBOX、本当にゴミばっかりですもんね」


 散々な言われようだが、そんな事は正直どうでも良い。手の震えが止まらん。

 まさか単発で狙ったキャラを出せるなんて。


 「帰りに気を付けなよ。交通事故とか」


 「そうね。本当に気を付けなさい。前も打点を挙げた時に熱を出したんだし。普段出来ない事をするパンって不安だわ」


 おお…。そう言われるとかなり不安になってきたな。俺に何か良くない事が迫ってるのか?

 とりあえず帰りは注意しよう。それに体調管理も徹底的にしなければ。


 俺はモンスターBOXを確認して、間違っても売却しないように、今引いたキャラに鍵を掛ける。

 あかん。にやにやが止まりませんな。


 「今まではPSでなんとか誤魔化してたけど、とうとう俺もキャラの暴力を味わえるのか」


 「そうっすよね。三波先輩はそこが残念でしたから。どれだけ上手くても限界があるんすよ」


 降臨キャラよりガチャ限の方が大体強いもんね。

 今までは騙し騙しで降臨キャラやら、ギリギリ適正キャラと言えなくもないガチャ限で頑張ってきたが。これで、次のクエストは盤石だぜ。


 「早速進化させまして。むふぅ。SNSのアイコンにしようかな」


 「なんかここまでずっと爆死してたから、今回は素直に祝福出来るよね」


 「実の厳選も頑張らないと。忙しくなるなぁ」


 珍しくタイガが素直に祝福してくれる。

 まぁ、俺のガチャ運はマジで酷いからな。

 偶にある神引きぐらい祝福してやろうという、勝ち組の上から目線なんだが。

 それでも嬉しい。これで野良でマルチプレイしても、弾かれなくて済むよ。


 その日はルンルン気分で、そしてかなり気を付けながら帰宅した。

 フラグにあった、交通事故やら体調不良なんてこともなく、翌日も普通に登校。

 テンションはMAX。今ならなんでも出来る。そう思ってたんだけど。


 「パン新キャラが発表されたよ。昨日パンが引いたキャラの明らかな上位互換だよね」


 「は?」


 昼休み。

 特大のサンドイッチを齧り付いてると、アップデートで新しい情報が追加されたらしく、タイガがその画面を見せてくれた。


 「な、な、な…」


 「実装されたらこのキャラが猛威を振るうんじゃないかなぁ」


 「い、いや、それでも俺が昨日引いたキャラが使えなくなる訳じゃないし…」


 「そうだけどね。誰が好んで下位互換を使うのって話だよ。一気に価値が下がるかもね。パンはそのキャラを引けるかな?」


 勘弁してくれよ。

 やっとキャラの暴力が出来ると思ったら、その上位互換がすぐに出てくるなんて。

 ソシャゲあるあるとはいえあんまりですよ。

 なんで排出率アップとかしたんだ。最後の回収だってか。アコギな商売しやがる。


 後日。

 みんなが続々と新キャラを引いていくなか、俺は引けず。またもや肩身が狭い思いをする事になる。

 てか、みんなの引きが良すぎる。俺の引きを吸い取られてんじゃないの?

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