第209話 VS浦和2


 三振三振三振。

 三波豹馬、絶好調なり。


 「飛ばし過ぎじゃない?」


 「どうせ次の試合は投げないし。それに新球が思ったよりも手応えが良い」


 現在五回裏が終わってグラウンド整備中。

 ベンチでタイガとお話し中。

 裏の龍宮の攻撃も0に終わり、未だにスコアは0-0。相手の増田を打ち崩せていない。

 俺はというと渚ちゃんブーストのお陰か、四球を一つだしたものの、ノーヒットピッチング。

 まだ渚ちゃんは来てないっぽいが絶好調である。


 「高速チェンジアップかぁ。普通のチェンジアップとの投げ分けも出来てるし悪くないよね」


 「輝夜さんには感謝だぜ。チェンジアップの投げ分けは考えてなかったからな」


 汚いストレート云々の話で思い付いたのが、高速チェンジアップ。俺のノーマルチェンジアップは120キロ後半まで速度を落としてるんだが、高速チェンジアップは140キロぐらい出てる。

 握りを色々弄って投げてみてるけど、鷲掴みが一番しっくり来てるかな。

 スクリュー気味に落ちていくのもポイントが高い。


 「五回で既に11奪三振だぜ。20いけるかなぁ」


 「油断はしないようにね」


 渚ちゃんが来るんだぜ。

 する訳ないだろう。


 グラウンド整備が終わり六回表。

 7番からの下位打順。

 四球で出したランナーは牽制で仕留めてやったので、未だに三人ずつ片付けてる感じだ。


 初球。

 右打者の胸元を抉るクロスファイヤー。

 ズバッと決まってストライク。

 球速掲示板がないので、分からないけど手応え的には150キロは超えている。


 2球目。

 インハイへのストレート。

 これにもバッターは手が出ずにストライク。

 完全に腰が引けている。


 そして3球目。

 アウトコースへ高速チェンジアップ。

 これが本当に有効なんだ。

 速いから途中までストレートにしか見えない。

 なのに思ったよりボールが来ない。

 頭ではチェンジアップが来ると分かってても、速いボールに体が反射で反応してしまう。

 そして空振り三振。


 「俺はとんでもない武器を手に入れてしまったのでは?」


 なにせ三回ぐらいからストレートと二種のチェンジアップしか投げていない。

 それなのに三振の山を築ける。

 しかも相手は埼玉の強豪浦和である。


 俺はプリンスからの返球を頷きながら受け取り、ロージンをつけながら観客席を見渡す。

 するとなんという事でしょう。マネージャーらしき人と一緒に渚ちゃんが居るではありませんか。


 「あー美しい。天使かよ」


 俺が見てる事に気付いたのか、ブンブンと手を振ってくれている。

 流石に大っぴらに反応する事は出来ないが、軽く帽子だけ取ってお礼をしておく。


 「三波豹馬。無敵モードに突入します」


 8.9番を連続三振。

 この回も三者連続三振で堂々とマウンドからベンチに戻っていく。

 三振数も既に14。

 俺の打席も入れていいなら16。

 いや、これは悲しくなるからやっぱり14。


 「そろそろ点を取って欲しいなぁなんて。チラッチラッ」


 打者陣にチラチラと上目遣いをしてみる。

 何故か吐き気を催したような顔された。

 解せぬ。


 「といっても。相手の増田も絶好調なんだよな」


 ヒット三本、四球を二つとランナーは出せているものの。得点の匂いを感じませんな。

 それぐらい増田が良い。練習試合した時から更に成長してる。


 これは我慢比べかなと思っていた時。

 この回先頭バッターだった一二三少年から快音が聞こえてきた。

 マウンド上の増田は天を仰いでいる。


 一二三少年の高校第一号で龍宮高校が先制した。

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