第57話 練習成果


 合宿9日目。

 一応明日は練習試合なので、今日が総決算。


 「ふーむ。これはびっくりだな」


 金子と大浦が覚醒してる。

 高校生から大学生って何かのきっかけでびっくりするほど成長するよね。


 金子はなんか球速が5キロ上がってる。

 フォームも別に変わってないし、体に無理させてる雰囲気もない。

 よっぽど、始めたばっかりの大浦に球速を抜かれたのが悔しかったのかね。

 そこまで球速に固執してる奴じゃないと思ってたけど。


 「おぉー。またネット直撃。なんであの体であんなに飛ぶんだろうね」


 大浦はピッチャーの練習もしてるが、本質はバッターである。

 ピッチャーをした事で何かを掴んだのか、レオン並みの飛距離は出てる。

 昨日、急にピッチャーの練習してたら「これだ!」って言いながら走って行ったからなにかあったんだろうね。

 まぁまだマシンで飛ばしてるだけだしね。

 これが実戦でどうなるか、楽しみなもんです。



 「うーん、痛くはない。痛くはないんだけど…」


 そして俺はというと、抜糸も済み肋骨の固定バンドも外してある。

 この季節はとにかく蒸れる。

 痒くて痒くて仕方なかった。よく我慢しました。


 肋骨も腫れも引いて痛みはないんだけども、なんか違和感がある。

 まだ、激しい運動とかは御法度だけど、軽い運動は出来る様になった。

 まぁ柔軟ぐらいしかしてないけどね。

 投げるのは後1.2週間はかかるかなー。



 「おーい、集合せぇ!」


 ナイターの練習も終わり今日の練習も終了。

 というより、実質合宿が終了。


 「お疲れさん。明日の練習試合で合宿も終わりや。体もだいぶきついやろうけど、それは向こうも同じ。しっかり練習の成果をみせてくれ」


 俺、よく考えたら入学してからほとんどきつい練習してないんだよね。

 GW合宿ぐらいか。

 入学してすぐ成長痛になって、今は普通に怪我。

 体力相当落ちてるのでは?

 これは、冬にしっかり体をいじめないとな。


 「で、明日の松美林やけど。知っての通り白馬がすんごい所やな。機動力で掻き回してくるチームやし、即席ピッチャーの大浦は結構しんどい思いもするやろ。守備でしっかり助けてやれよ。この合宿で守備の練習はしっかりさせたつもりや」


 この合宿で、ビール腹を必死に揺らしてずっとノック打ってたからなぁ。

 途中で父さんに代わったりしてたけど。


 「先発は大浦に投げてもらって、打者一巡を目処に金子と交代。そっからは1人で投げ切ってもらう予定や。一応大浦をそのまま外野に待機させとくけどな」


 金子は試練だな。

 松美林打線は一筋縄ではいかない相手だし、あのにっくき白馬君もいる。

 3日に1回ぐらい連絡取ってるけど。

 モンスターバウンドのフレンド登録もしてるんだよね。仲良しかよ。


 ここで、金子だけじゃなくみんなも一皮剥けてくれれば龍宮高校は物凄くレベルアップするし是非是非頑張ってもらいたいね。


 怪我してる分際で上から目線失礼します。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る