第255話 スーパーバッティングピッチャー


 どうも。龍宮高校のスーパーバッティングピッチャー、三波豹馬です。


 「へいへーい! こんなんで弾呉四男を打てるのかーい!!」


 次の相手の東海大。弾呉四男は俺に似てるし、相手の三年エースもサウスポー。

 そんでもって、恐らく次の試合は俺の出番がないときた。


 それなら俺は喜んで練習相手になりますよ。ポコポコ打たれるのは腹が立つけど、これも龍宮が次の試合に勝つため。

 そう思って全力でバッピの役目を果たそうと頑張ってる訳なんだが。


 「はぁー、やれやれ。絶好調過ぎて辛い」


 「レオン!! ぶちかませ!!」


 「あの顔をなんとかするぞ!!」


 練習の為とはいえ手加減はしないぞと気合を入れてバッピをしてるんだけど、何故かやたらと調子が良い。


 レオンも抑えれるし、大浦も抑えれる。

 今日はツーシームのキレが抜群です。

 俺がドヤ顔でみんなを煽るとヒートアップ。

 うむうむ。今日も豹馬君は愛されてますな。


 「弾呉四男はツーシームは投げないんだから練習にならないんじゃないかな」


 「それもそうか」


 金子に言われて思い直す。ツーシームのキレが良いから多投してたけど、練習にならないなら意味がない。


 カーブスライダーチェンジアップだったな。これを重点的に投げよう。



 ☆★☆★☆★


 「龍宮かー」


 「抽選が決まってから覚悟してたけどー」


 「俺達くじ運悪いなー」


 弾呉兄弟は自宅で龍宮の試合映像を見ていた。長男次男三男がソファに並んで画面を見ているが、その顔は少し悲壮感が漂っている。


 「順番で言ったら先発は三井だよな?」


 「三波の方がやりやすかった」


 「四季で練習出来るからな」


 東海大は先発を三井と想定して対策を組んでいる。去年、右の本格派で三高のエース菊池から三点取れたものの、三井も凄い投手だ。決して油断出来る相手じゃない。


 「そういえば四季は?」


 「憧れの三波と会えるってんで部屋で悶えてる」


 「気持ち悪っ」


 この場に居ない四男の四季は、いつも部活内で憧れは豹馬だと公言している。

 簡単に言えばミズチみたいな奴だ。


 中学の途中までは、ただサウスポーというだけで、なんの取り柄もない平凡な投手だった。しかし練習試合で豹馬のシニアと当たり、そのピッチングに衝撃を受けた。


 そしてダメ元で投球フォームを真似てみたら、思いの外しっくりきたのだ。

 そこからはあれよあれよと急成長。燻っていた中学時代では考えられないぐらいのスカウトが来たが、選んだのは兄達がいる東海大。


 実は龍宮からもスカウトは来ていた。しかし、その頃にはもう東海大に行くと言ってしまっていたのだ。もう少し早かったら四男の四季は龍宮に来ていたかもしれない。



 「やるぞやるぞやるぞ! 三波さんに俺のピッチングを見てもらうんだ!」


 そして兄弟で甲子園。特に長男の一政は今年で最後。なんとしてでも龍宮に勝ち、そしてそのまま勝ち続け、一政を甲子園に連れて行く。


 四季はベッドの上で打ち上げられた魚の様にぴょんぴょん跳ね、悶えながらも内心では強い決意を抱いていた。


 その様子を見た双子の妹は気持ち悪いと吐き捨てた。


 

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