第299話 友情の再確認
『九回表ツーアウト満塁! 一発出れば同点の場面! マウンドには龍宮ナインが集まります』
「一応確認しておきたいんだけど」
俺はマウンドに集まった内野陣を見回す。
レオンは顔を逸らして、速水は気まずそうにしてる。
「もしかして、みんな俺の事嫌いだったりする?」
一応。本当に一応だけど聞いておきたかった。
「その…。ちょっと気が抜けてたところがあるかもしれん」
「僕も…」
珍しくレオンがしおらしい態度で俺に気を使ってくれる。速水も恐る恐るって感じで答える。
「いや、野球をやってる以上エラーは仕方ない。打線の援護ももらってる事だし、いつも助けてもらってるから。でも、こうぽんぽんと続くとね。俺の事嫌いなのかなって思っちゃったり」
「めんどくせぇ野郎だな」
「にゃんだとう!」
隼人があほくさって感じで俺の事を見てくる。本当に気にしてたんだぞ!
どうしたこうなったか。
場面は九回表の正徳の攻撃で7番からの打順。なんと俺は、連続三振記録は途絶えたものの、それからもパーフェクトピッチングを継続。九回までに20奪三振と絶好調だった訳だ。
これは記録樹立プラス完全試合で明日の一面は間違いなしだぜとか調子に乗ってたのが良くなかったのか。
先頭打者の7番に綺麗にヒットを打たれた。
まあ、仕方ないかと俺はすぐに切り替えた。完全試合はしたかったけど、連続三振記録でもチヤホヤされるには充分だろうと。
でも8番を三振に奪ってからの代打の9番。
なんの変哲もないサードゴロに打ち取って、ダブルプレーで試合終了だと思ったら、まさかのレオンがファンブル。
レオンは守備が得意って訳じゃないからね。下手でもないんだけど、たまにやらかす。そんなところまで父さんにそっくり。
エラーでワンアウト1.2塁になって、1番を三振。22個の三振って記録的にどうなんだろって思いながら2番を迎えて、セカンドゴロに打ち取ったと思ったら、なんと次は速水がお手玉。
4-0のツーアウト満塁。一発出たら同点って感じになって、マウンドに集まってる訳だ。
まあ、完全試合を継続してて、ヒットを打たれて気が抜けたってのもあるんだろう。
完全試合をやってる時は守備にも負担が掛かるし。
「まあ、野手のミスを挽回してこそ真のエース。俺に任せておきなさい」
「さっきまで嫌われてる云々言ってた人物とは思えないセリフだね」
こら。タイガくん。せっかく俺が良い事言ったんだから茶々入れないの。
「話はまとまった?」
「キャプテン、伝令に来てから何も喋ってないっすよ」
「特に言う事はないしね。豹馬の凄さはこれまで一緒に練習してきたんだから良く分かってるよ。これぐらいなんて事ないでしょ?」
「ま、まあそうっすね!」
流石キャプテン。俺のよいしょの仕方が良く分かってらっしゃる。そこまで言われたなら、バシッと抑えないと男が廃るってもんよ。
3番相手にツーシーム三つで三振を奪いゲームセット。終わってみればなんて事はない結果になった。
九回一安打23奪三振。球数は丁度100球。
控えめに言って神では? 今日の夜のニュースが楽しみで仕方ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます