第239話 デート


 「これがタピオカ。摩訶不思議な飲み物? だぜ。正直何が美味しいか分からんな」


 「見栄えですよね〜」


 月曜日。今日は練習が休みという事で、渚ちゃんと東京の都会の方に出て来てデートある。

 渚ちゃんは今年受験で、モデルの仕事との両立は中々忙しいと思うのだが、わざわざ時間を作ってくれた。


 「龍宮なら落ちる気がしないので大丈夫ですよ〜。むしろ神奈ちゃんが心配です〜」


 まぁ、俺が心配するのも烏滸がましいぐらい渚ちゃんは頭が良いんだが。

 俺は前世の大学卒業の貯金があるから優等生ムーブ出来てるけど、渚ちゃんは違う。

 県内トップ偏差値の高校も目指せるぐらい、というか、普通に合格圏内に入ってるぐらいには頭が良いのだ。


 完璧美人とは渚ちゃんの事を言うんだろう。

 美人で性格が良くて、頭が良い。

 欠点は男の趣味が悪い事か。……こら。


 「今日は夏物の服を買おうと思ってまして〜」


 「服かー。最近俺も買ってないな」


 「私がコーディネートしたいです〜。でもパン君のサイズって中々〜」


 そうなんだよ。

 お店にあんまり俺の身長のサイズって置いてないんだよね。ほぼ2mだから仕方ないんだけど。

 だから俺は大抵ネットでポチポチしてる。偶に外れもあるんだけどね。


 「アメリカとかに行けば普通にあるんだけどな」


 「じゃあいつか一緒にアメリカ旅行に行きましょ〜う!」


 そうね。旅行というか、いつかメジャーに行くつもりだから、向こうに住む事になるんじゃないかなと思うけど。

 勿論引退したら帰ってくるけどね。俺は日本が大好きゆえに。


 「だから今日はとりあえず渚ちゃんの買い物に付き合うよ」


 「ありがとうございます〜」


 渚ちゃんの着せ替えを見れるとか最高かよ。

 世の男性は女性の買い物に付き合うとかなり疲弊するというデータがありますが。

 俺はそんな事ないね。彼女の色んな姿を見れると思えば疲れる訳ないじゃんね。

 ちょっと俺好みの服とか言ってみようかな。




 「あー疲れた」


 渚ちゃんに聞こえないようにボソッと呟く。

 女性のバイタリティを舐めてた。

 さっきの前言は撤回させていただきますね。

 普通に疲れる。なんで女の人って買い物してたらあんなに行動力があるんだろ。


 「パン君〜! 次に行きますよ〜!」


 「はーい!」


 野球の体力とはまた別の体力が必要になるな。

 女性と男性ではこの積んでる体力が違うんだろうか? 絶対俺が先にバテるなんてありえないんだけど。



 「思ったよりも良いのが買えました〜」


 「結構買ったね」


 買い物袋を抱えてる渚ちゃん。

 俺も持ってるんだけどね。それでも結構な荷物だ。これは帰りはタクシーにした方が良さそうだな。


 「ご飯はどうする?」


 「お寿司が食べたい気分です〜。でも先に地元に戻りませんか〜? 思ったよりも時間を使っちゃいましたし、荷物も増えちゃいました〜」


 それな。ちょっとこの大荷物を持ってご飯を食べに行くのは邪魔になりそうだ。

 一旦帰って荷物を置いてからご飯を食べに行こうか。車があればなー。

 来年の夏が終わるまでは免許取りに行けないし。

 もう少しの辛抱か。




 「今日はありがとうございました〜」


 「いえいえ。こちらこそ。良い息抜きが出来たよ」


 最近練習ばっかりだったしね。

 夏の予選が近付いてきてるし。


 「夏はいっぱい応援に行きますね〜!」


 「それは頑張らないとなー」


 ドラ一を目指してるキャプテンの為にも。

 甲子園出場はマストである。やっぱり一番アピール出来るのはあそこだし。

 やっぱり一番の壁は三高かな。

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