第36話 VS松美林2


 試合は4回表。

 スコアはレオンの犠牲フライで一点を先制している。

 俺はというと、初回に白馬君にヒットを打たれたものの三振ゲッツーを取り、その後はランナーを出していない為結果的に9人で抑えている。

 しかし、当たりが良くても野手の正面に飛んだり、ファインプレーに助けられたりと順調にここまできたとは言えない。

 三振もここまで2つだけである。

 そら、調子も上がりませんわな。

 三振という合法麻薬が足りてない。


 そして1番重要なのが3回裏の俺の打席。

 珍しくバットにボールがいい感じに当たってセンター方向へ。

 ドヤ顔の準備をしたのも束の間。

 センターの白馬君が滑り込んでスライディングキャッチ。

 お前ほんまふざけんなよぉ。

 ホワイトホースがよぉ。

 走りながらガッツポーズしてた右手どうしたらええねん。

 顔真っ赤にしてベンチ戻りました。

 

 この回先頭バッターの白馬君はなんとしても抑える所存です。

 ツーシームで度肝抜いてやる。


 初球、アウトローへのナックルカーブ。

 最後をインローへのツーシームで抑える為に追い込むまではアウトコース中心で投げる予定。

 見送ってストライク。


 2球目はアウトローへのチェンジアップ。

 遅い球に慣れさせといて最後はズドンの予定。


 だったんだけどなぁ。


 白馬君は少し泳ぎながらも、ボールを上手く掬い左中間へ。ツーベースヒットである。


 「ガッデム!!! それは決め球じゃねぇんだよ!! なんてバットコントロールしてやがる。天才かよ」


 最後は罵倒になってなかった。

 勘弁してくれよぉ。

 せめてファールで逃げてくれよぉ。

 フェアゾーンに飛ばすんじゃねぇよぉ。

 ジーニアスかよぉ。

 俺は恨みを込めた目で塁上の白馬君を見るが苦笑いしながら会釈してきた。


 良い奴かよ。

 なんて性格が良さそうな人なんだ。

 野球が上手くて、性格が良くて、顔も普通にイケメン。

 おいおい。天は二物を与えずじゃないのかよ。

 これは性癖がクズじゃないと釣り合いとれないぞ。

 5歳以下の女の子しか受け付けませんとか。

 それぐらいしてくれないと俺の精神衛生上良くない。


 気を取り直して、2番バッター。

 最初からバントの構え。

 一打席目は結局はエンドランしてきたけどこの回はどうか。


 初球はアウトコースへのストレート。

 普通に転がされた。

 バッターはアウトでワンアウト3塁。


 これは一点覚悟ですね、はい。

 幸い今日の相手ピッチャーは打てない事はない。

 俺がバットに当てれるくらいだし。

 調子が良くないのは最初から分かってた事だし、今日はバッター陣に期待します。

 外野を下げて、長打だけは避ける。

 内野も前進守備する事なく普通の守備位置。

 まだ中盤だしね。まだ慌てる時間じゃない。


 結局、高めのストレートを叩きつけられ内野ゴロ。

 白馬君は悠々とホームインで同点。

 試合は振り出しに戻る。


 続く4番バッターを三振に抑えてこの回を終えた。


 「天敵だ天敵だ。レオン以来の天敵よ。なんで左打者は得意なはずなのに、左打者ばっかり天敵が出てくるんだ。しかも、ホワイトホース君は性格良さそうだしさぁ。これ、俺が完全に悪者じゃんかよ」


 「安心して。パンはいつでも悪者だよ」


 うるせぇ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る