第304話 試合後


 無事に龍宮高校は9-1で勝利して準決勝に進出した。キャプテンは七回を投げて1失点。六回にぽこんとホームランを打たれてしまったけど、それ以外はほぼ完璧な内容。


 完投するかって監督に聞かれてたけど、経験を積みたいだろうってミズチにマウンドを譲るのは凄いなって思った。ドラ一指名の為にもっとアピールしたいだろうに、後輩の事を思ってエゴを封印する。


 中々出来る事じゃないだろう。多分俺は無理だ。マウンド譲りたくない人間ですし。これぞキャプテンって感じがしました(小並感)


 ミズチもその心意気に奮起して、四球を一つ出したものの無失点ピッチング。初戦は緊張してたけど、それもしっかり適応して良い内容の結果になった。


 打線はレオンがホームラン2本を打ったり、一二三少年が全打席安打の活躍を見せたりと、先発全員安打。ミズチと一緒のタイミングで交代してマスクを被ったプリンスも、良いリードをしてたし、打つ方でもタイムリーで大活躍。


 まさに龍宮高校に死角なしって感じだ。


 次の対戦相手はまだ分からない。試合が終わった後に、また抽選したけど、他がまだだから。もしかしたら桐生と当たる可能性だってある。


 桐生とやるなら俺が先発したいところだ。監督にアピールしておこう。キャプテンも投げたいって言いそうだけど。俺は大人じゃないから、素直には譲らないぞ。バッセンでどっちが多くヒットを打てるかで勝負でもしようじゃないか。


 で、試合が終わった後はいつもインタビューがあるんだけど、俺達はスルー。待ち構えてた記者さん達の横を通って俺達は甲子園を後にした。


 まさか、試合後のインタビューまで断られると思ってなかったのか、記者さん達はポカンとしてた。君達の同業者が馬鹿な事を仕出かしたせいだぞ。


 俺達は良い建前を得たとばかりに活用させてもらいます。騒動に決着がつくまではこのスタンスでいくつもりだ。


 これでまた生意気だなんだと記事にされるかもしれないが、こっちからすると好都合。そこも出禁と取材拒否して、騒動が終わればまともな所しか残ってないという寸法である。


 まあ、そこまで上手くいかないだろうけど。


 「あいつらは自分達の報道内容に責任を取らないからな。迷惑を被るのはこっちなのに。意味の分からん槍玉に挙げられたらたまったもんじゃない。記者の方も書いた人の実名ぐらい入れるべきだよ。ネタにするだけしといて間違ってても放置とかザラだし。それで一人の人生やその後のキャリアがダメになるってのを理解してないんだ。金になれば、有名になれば良いってスタンスばっかり。もちろんまともな所もあるけど、ほとんどはそういう所だよ」


 旅館に帰って来て、念の為弁護士とかと一緒に来ていた父さんが愚痴るように言う。


 父さんも現役時代に色々スキャンダルをでっち上げられたりして、苦労してたみたいだ。たまたま一緒に歩いてた40代の女の広報さんとの熱愛疑惑とかがあったらしいぜ。


 まだ若手の時で母さんと結婚もしてなくて、俺が生まれてない時らしいけど。


 「お前も気を付けろよ。一度そういうイメージを付けられたら払拭するのにかなり時間がかかる。俺は未だに年上の女性が好きと思われてるからな」


 「こわっ。もっとSNSで渚ちゃん好き好きアピールでもしとこうかな」


 それはそれでキモいか。

 まあ、なんにせよこの騒動は甲子園中に決着する事はなさそうかな。


 一応主役になる予定の龍宮を取材出来ないようにした渦中の会社の罪は重い。反省してどうぞ。どうせ適当に謝罪して、またおんなじ事を繰り返しそうではあるけど。

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