第112話 新たな年
「うーん。掃除するほど汚れてないなぁ」
今日は大晦日。
筋肉痛の体はまだ治ってないが、ぎこちなく動きながら部屋の掃除をしていた。
「まぁ、ほとんど寝るだけの部屋だもんな。何かあったらリビングでやるし」
調子に乗って大掃除でもするかと思ったけど、やっぱやーめた。
今日は一日中ゴロゴロする事にしよう。
「見れてないアニメをこの機会に一気に見るか。秋から冬は忙し過ぎてリアタイで見れてないからなぁ」
ちょっとSNS開くとネタバレするから、なるべくリアタイで追いたかったんだけど。
「年越しそばって由来なんなの?」
「知らなーい。美味しかったらなんでも良い」
アニメを見てたらいつの間にか寝ていて、晩御飯の時間になっていた。
眠気眼でリビングに行くと、俺以外の家族が全員揃っていた。
年越し恒例の蕎麦を食べつつ、母さんのお手製お寿司を食べる。
我が家の年越しのご飯は毎回こんな感じだな。
「あ、そうだ。明日、朝から初詣行くけど着いてくる? レオン達も一緒」
「行く行くー! 渚も誘ってみよっーと!」
妹よ。本当に君は優秀な奴だな。
俺の思った通りの行動をしてくれるじゃないか。
「ご馳走様ー!」
さーて、年明けまではソシャゲ周回でもして過ごしますかね。
「あ、そういえば明日は爺ちゃん婆ちゃんが両方来るからな。昼までには帰ってこいよ。じゃないとお年玉貰えないぞ」
「そういえばそうか。絶対帰ってこなければ」
お小遣いに困ってる訳じゃないけど、お年玉貰えるのってなんか嬉しいよね。
なんか特別なお金って感じがする。
まぁ、アニメの初回限定盤やらラノベを買うんだけどさ。
「はい、明けましておめでとうございまーす! 今年もよろしくねー」
お笑い芸人の笑ったらダメなやつを見ながら年を越す。これ、もうちょっとしたら終わるんだよな。
年末はこれ見るの楽しみにしてたのに。
父さんのさらっとした年始の挨拶を返しつつ、スマホにも来ていた大量のあけおめ連絡をパパッと返していく。
人気者になったからか、そこまで仲良くない人からも来てて、正直誰が誰だか分かっていない。
スーパースターってこんな感じなのかな。
自意識過剰になりつつも、そろそろ寝る準備をする。
普段はこんな時間まで起きてないから、とても眠いんだ。
結構寝たのにな。
「うぇーい。あけおめー」
「あけおめんてぃうす」
翌日の元旦。
家の近くの少し大きめの神社にみんなで集合して、お参りをする。
ウルが訳の分からない挨拶をしてるが、いつもの事なのでスルーしておく。
「パン君〜。あけましておめでとうございます〜。今年もよろしくです〜」
「あけおめー! こちらこそよろしくね〜」
レオンと来ていた今日も綺麗な渚ちゃんともしっかり挨拶。
後ろで人を殺しそうな目をしている兄貴は視界に入れないようにしておく。
分かるぞ。俺もさっき、ウルといちゃいちゃしていた神奈を見てそんな感じだったからな。
「おみくじ引こうぜー! 神社に来たらこれをやらないとな! ガチャの前の運試しだ!」
「パンは去年もそんな事言って、凶だったよねー。辞めておいた方が良いんじゃないかしら?」
「今年の俺は一味違うって事を見せてやるぞ!」
タイガと腕を組んでラブラブなマリンが茶化してくるが、俺は負けない。
今年こそまともなガチャ運を!!
「ふーむ。彼女と居る時の隼人ってあんな感じなんだな。しっかり彼氏しちゃって」
手を繋いで、出店を見ながらキャッキャしてる彼女と人混みで煩わしそうにしながらもしっかり付き合って上げてる隼人。
あの隼人がね〜。人間変わるもんですな。
「よし! いざ!」
お金を払っておみくじを開封。
凶以外ならなんでも良い! 頼むぞ!
「す、末吉か」
くっ! なんとも言えない。
凶の一歩手前じゃないか。確かに凶以外なら良いって言ったけどさ。
「わっ。また大吉だ」
「私もー!」
タイガマリンは去年同様大吉らしい。
おかしいだろ。賄賂か何か払ってんの?
「はぁ。今年もこんな感じか〜」
俺らしいっちゃ俺らしいんだけどもさ。
甲子園もあるってのに。
まっ、おみくじに左右されるほど俺は甘くないけどな!
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