骸骨は見つかる
雨の降る森の中を、走って逃げる者たちがいた
「ふっ、ふっ、くそっ!なんでバルバルに巨猪パワフルボアがいるんだ!」
「知らないけどっ!この雨なら、匂いをたどってこれないはず!」
「そうだな……あっ!あれはバルバル洞窟じゃないか!低ランクダンジョンだ。強いモンスターはいないはずだ。あそこで雨宿りをしよう!」
「もう少しでバルバルね。わかったわ。そうしましょ」
男と女のパーティは、Gランクダンジョン、バルバル洞窟の中に入り、雨宿りをすることにした
「ふぅ。とりあえず一安心だ」
「でも入り口じゃ他のモンスターに見つかるかもしれないわ。少し奥に入ってみましょうか」
「このダンジョンにはスケルトンとゴブリンがいたはずだ。体力は温存しておくべきだろう」
「そう……ね」
リュックの中から薪を出し、重ねていく
幸い薪は湿気っていなかった
「よかった……雨にやられなかったようだわ。『種火よ。リトルファイア』」
女は指の先から小さな火を出し、薪へ移していく。
「これで暖はとれたな。食料は干し肉、水も少し残ってる。なくなっても雨水でも飲めばいいだろう」
「そうね。私は安全確認のために、少し奥を見てくるわ」
「あぁ。大丈夫だとは思うが、くれぐれも気ィつけろよ」
「わかってるわよ」
女は荷物を置き、武器を片手に奥へと進む
「『光よライト』」
光源魔法を使い、辺りを照らす。少し奥へ進んだところで明るい部屋へ出た
(天井の穴から月の光が漏れているのね……)
月の光に見惚れつつも、彼女はあるものを発見した。スケルトンだ。
(スケルトンだわ。でも、なにかおかしい……?)
彼女は素早くライトを消し、物陰に隠れる。物陰から頭を少し出し、先ほど見つけたスケルトンを見た
月に照らされているからなのか、そのスケルトンは青く見えた。
腰布を巻き、漆黒の鞘を腰に差し、左手には木の盾、右手にはなにも持っておらず、右の腰に石の棍棒を差している。面白いのは、背骨のあたりにボロボロの剣を刺しているところだ。その剣の柄が、首のあたりの骨に引っかかっている状態だ。
(なにあれ。背中に背負っているつもりなのかしら)
女はその佇まいに少し笑ってしまったが、すぐに真面目な顔へと戻る
そのスケルトンは、月を見上げているようだった。
彼女は気づかれないように近づき、ダガーを構え、スケルトンの顔をめがけて投げつける。
スケルトンは即座に振り向き、それを木の盾でガードした。木の盾からダガーを引き抜き、首を傾げ、飛んできた方向へ軽く投げ返した。
「ダン!来て!」
ダンジョン内で大声を発することは、禁止行為に等しい。なぜなら、音に反応しモンスターが集まってくるかもしれないからだ。だが彼女は、目の前のスケルトンから、只ならないものを感じ取り、すぐに仲間を呼んだ
「どうした!」
「スケルトンよ!」
「はぁ?スケルトン如きお前1人で、なんだあいつ……骨が……青い?」
ダンと呼ばれた男は、最初こそ呆れ、彼女をバカにしていたが、目の前のスケルトンを見て目の色を変えた
「ユニークモンスターか」
「そのようね」
ユニークモンスター
突然変異体とも呼ばれる。元々の種とは違う成長や、特別な進化をし、原種とは圧倒的に違う強さを保有していることが多い
「へっ、スケルトンのユニークモンスターなんてなかなか見ない。ギルドに報告しなきゃな」
「そうね」
2人は武器を構え、スケルトンを注視するが、当のスケルトンは、武器すら構えずこちらに襲いかかりもしてこない
「剣を抜かないな」
「すぐに襲いかかってこない……臨戦態勢もとらないなんて……本当にモンスター?なんのつもり!」
彼女は目の前のスケルトンに声をかけた
「なんのつもり……それはこちらのセリフだな」
スケルトンは首を傾げ、疑問を返した
「喋ったぞ!」
「見りゃわかるわよ!」
なんと、目の前のスケルトンは声を発したのだ。彼らは不思議に思いつつも、また言葉を投げつける
「あなたは、ここでなにをしているの!」
「月を、見ていた」
「月を?」
「あぁ。美しい月だ」
スケルトンは、天井に空いた穴を指差し、月を見上げる
「あなたたちは、ここになにしに来たのだ?」
スケルトンからの質問だった
「あんたなんかに「俺たちは雨宿りをしに来た」」
女の言葉を遮り、男が前に出て喋った
「雨宿りか……この水は
「……?いや、降っている水は
「あめ、雨か…雨の中の月も美しい」
スケルトンは穴の中から、雨に濡れた手を握り、また月を見上げる
「雨宿り、といったか、ここから先へは行かない方がいい。スケルトンやゴブリンがたくさんいる」
「あぁ。忠告感謝する。話は変わるが、お前はスケルトンのユニークモンスターか?」
「ユニークモンスター?杖や剣を持つスケルトンのことか?俺、いや、私はただのスケルトンだ。剣は持っているがな」
「次の質問だ。なぜお前は言葉を喋れる?」
「なぜだろうな。あなたたちのように喉があるわけではないのに。私にもわからない」
「ふむ。邪魔をして悪かったな。俺たちは戻るよ」
「ちょっ!ダン!」
「あっちはこちらに危害を加える気はないみたいだし、俺たちも手を出すのはやめておこう」
2人はひそひそと会話をする。ダンは入口の方へ戻ろうとするが女はスケルトンへ語りかける
「あんたは、私たちを襲うつもりはないのね!」
スケルトンはその言葉を聞き、口を開きかけたが口を閉じ顎を触り何かを考えているようだ
「危害……加えるつもりはないが、そうだな。できれば話がしたい」
「話?」
「あぁ。私はこの洞窟から出たことがないものでな。外の話を聞きたい」
青いスケルトンはこちらに数歩近寄る。
女は構えるが、男は数歩歩き、スケルトンの前へ出向いた
「ダン!」
男は振り向き、真剣な顔で彼女言った
「大丈夫だ」
そして、スケルトンは男にこう言った
「話を聞かせてくれるならば、君たちが休んでいる間の見張りをしていよう」
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